~ 無名のおっさん達から学んだ人生~ 第1回 : 礼節の人 大石伸晴氏
私に影響を与えた上司シリーズ、
第一回目は新入社員時代、私が配属された部の部長であった大石伸晴氏だ。
大企業になれば部長というのは、新入社員の仕事のスコープ内において最も高い職位ではないだろうか。 新入社員の私が仕事で直接絡むことはあまりなかったが、 仕事以外のところで多くの指導を受けた。 (やわらかく書いているが、よく怒られたということだ)
この方は気さくな方だが、非常に躾に厳しい方だった、仕事が出来る出来ない以前に、言葉使い、立ち居振る舞い、 電話の出方、お酒の注ぎ方に至るまで指導をされた。 社会人人生で一度しかない新入社員時代にこういう人が上司にいた意味は今思うと非常に大きかった。 私は生来あまり愛想のいいほうではない。 風貌も決して実直というイメージを与えないほうで、 今では立場的に辛辣な発言もしなくてはならないことも多い。 それでもクライアントから特に嫌われるようなこともなく仕事が出来ているのは、最低限の礼節がしっかりと身についているからだと思う。
新入社員時代に行われるビジネスマナー研修は数日で終わるが、 部長が指導教官となるとそうはいかない。 土日以外は気を抜けない日々が私を一気に社会人にした。
よく言われることだが、叱ってくれる上司がいることは貴重なことだ。 思えば、部長ともあろう人が新入社員の指導をする必要性はあまりない。 本当に私のことを心配してくれていたのだと思う。
常に人に見られていることを意識しなくてはならない。 人には礼節を尽くし、気を抜いてはいけない。 そうした社会人としての基本動作を教えていただいた。
彼のお客さんに対する立ち居振る舞い、日本人が苦手とする外国の方への接し方、どれをとってもスマートだった。 ブリティッシュジョークを交えながら、海外からの要人と会話をする姿は外交官さながら。 タクシーを捕まえて、お客さんを送り出す一連の動作などは芸術的だ。
私と妻にフレンチをご馳走していただいたことがあったが、 「あんなにスマートにフォークとナイフを使って綺麗に食べる日本人はいない」 といまだに妻は話題にする。
実家に届いた手紙の丁寧さと達筆さに母は感涙していた。
忘れられないのは私たちの結婚披露宴で仲人をお願いした時のスピーチだ。 なんと、あんちょこもなしに、両家の家族のプロフィールを詳細に、 兄弟姉妹の誕生日まで暗記して、紹介してくれたのだ。 話をしている姿は汗だくだったが、いつも通りスマートで完璧だった。 歳を重ねるほど、それがいかに大変でありがたいことかが良く分かる。 暗記するには相当の時間を費やしたに違いない。
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