「女性の活用」と高齢期の幸福度

画像: Koziro Hasegawa

2014.12.02

ライフ・ソーシャル

「女性の活用」と高齢期の幸福度

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

女性高齢者が男性高齢者よりも幸福である理由。【老いの工学研究所のHPに掲載したコラムを、転載しました。】

女性高齢者は、男性高齢者よりも幸せであるようだ。次の表は、現在の幸福度を100点満点で採点してもらったものだが、女性が3~5ポイント、男性を上回った。(老いの工学研究所調べ。2013年)

「平成21年度国民生活選好度調査」を見ると、高齢者の幸福度(10点満点)は次の通りとなっており、やはり女性が男性を上回っている。(※80歳代のデータはない)

女性高齢者が男性高齢者よりも幸福である理由を、いくつか考えてみよう。

第一に、女性は地域と関わりながら暮らしてきており、高齢になってもその関わりが生活の充実をもたらしていることだ。男性は仕事場で過ごす時間が長く、地域との関わりがないために、引退してから手持ち無沙汰になりがちである。

第二に、子育てに注力してきたので子供との心のつながりが強く、高齢になってからの子や孫との会話が男性よりも多いことである。子から様々な本音の相談を受けるのは母親であり、父親とのコミュニケーションは間接的であったり、表面的であったりする。子や孫との頻繁で親密な交流は、高齢期の励みとなる。

第三に、女性には炊事・洗濯・掃除などの家事をする力があるので、家庭における役割や存在価値が明確になっている。男性が仕事に行かず、稼ぐのをやめると、その役割は曖昧になり存在感も低下するが、その分、さらに女性の存在感は大きくなる。自分の役割や価値がはっきりしているのは、高齢期のやりがいとなるだろう。

第四に、仕事に集中し、忙しく働いた男性に比べて、空いた時間を埋めるコツを会得しているのが大きい。用事がなくても、暇な時間を持て余しても、男性のようにそれに焦りや罪悪感を覚えることなく、楽しんで時間をつぶす術を知っている。遊ぶ力があると言ってよいと思うが、これは時間に余裕のできる高齢期には欠かせないスキルである。

第五に、謙虚である。高齢女性は、「養ってもらっている」「食べさせてもらっている」という謙虚な気持ちを持って生きてきた。このような態度を持っているから、女性は周囲と調和的に関わることができる。「俺が食べさせてやっている」という自負や、得てきたカネや地位を誇りにしているような男性には、残念ながらこのような謙虚さがないので、周囲と良好な関係を築くのが難しい。

地域との関わり、子とのつながり、家事の能力、遊ぶ力、謙虚さ。並べて見れば一目瞭然、これらの高齢女性が持っている力や姿勢は、地域や家庭に押し込められてきた環境によるものだ。言い換えれば、女性差別の結果として、高齢女性が幸福度を高めているのではないかと考えられる。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

フォロー フォローして川口 雅裕の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。