【シリーズ:個として強い職業人を考える】 組織力は高いが、「個」で局面を突破できる選手が少ない……日本のスポーツ界でよく言われる批評だが、いざ自分は職業人としてどうなのだろう。
FIFA女子ワールドカップ2015を見事、準優勝で終えた日本チーム。佐々木則夫監督は帰国直後の記者会見で、今後の日本代表の最重要の課題について「個の質と個の判断を上げていかないと」と語っていました。
サッカーに限らず、スポーツの世界では、日本は組織力には優れているが、個人の力となるといまひとつぜい弱で、大事なところで勝ちを逃すというようなことがよく言われます。負けた試合の翌日ともなれば、私たちの少なからずが批評者となり、「なんであそこでシュートせずにパスに逃げたのかね」とか「やっぱり個で突破できる選手がいないんだな」とか、「相変わらず日本は決定力がない」とか……。
そうコメントすることも場合によっては、日本代表選手への愛余ってのことかもしれませんが、きょう、この記事では、ひるがって自分自身がどれだけ「個として強い職業人」であるのかを自問してみたいと思います。自問のポイントは次の4つです。
1□自分は「仕事人」か「会社人」か
2□しびれるほどのリスクを背負って何か仕掛けたことがあるか
3□万年レギュラーポジションのダレは出ていないか
4□定年が35歳だとしたら……
◆自分は「仕事人」か「会社人」か
あなたは、自分を一職業人として社外で自己紹介するとき、次のXとYのどちらのニュアンスにより近いでしょうか───
【Xタイプ】
〇「私は〈 勤務会社 〉 に勤めており、
〈 職種・仕事内容 〉を担当しております」。
【Yタイプ】
〇「私は〈 職種・仕事内容 〉の仕事をしており、(今はたまたま)
〈 勤務会社 〉に勤めております」。
Xタイプは「会社人(かいしゃじん)」の自己紹介ニュアンスです。職業人であるあなたを言い表すものとして、まず勤務先があり、次に任された職種・仕事内容がきます。他方、Yタイプは「仕事人(しごとじん)」のものです。仕事人はまず職種・仕事内容で自己を言い表します。そしてその次に勤めている組織がきます。
仕事人の典型はプロスポーツ選手といっていいでしょう。たとえば、米メジャーリーガーのイチロー選手の場合、どうなるかといえば、「私は〈プロ野球選手〉の仕事をしており、今はたまたま〈マイアミ・マーリンズ〉に勤めております」です。去年であれば、後半部分は「今はたまたま〈ニューヨーク・ヤンキーズ〉に勤めております」でした。
野球にせよ、サッカーにせよ、プロスポーツ選手たちは、仕事の内容によって自己を定義します。彼らは「組織のなかで食っている」のではなく、「自らの仕事を直接社会に売って生きている」からです。彼らにとっての仕事上の目的は、野球なり、サッカーなり、その道を究めること、その世界のトップレベルで勝負事に挑むことであって、組織はそのための舞台、手段になる。そういう意識ですから、世話になったチームを出て、他のチームに移っていくことも当然のプロセスとしてとらえます。ただ、それは組織への裏切りではありません。“卒業”であり、“全体プロセスの一部”なのです。いずれにせよ仕事人の働く意識は次のようなものになります。
次のページ◆しびれるほどのリスクを背負って何か仕掛けたことがあるか
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【個として強い職業人を考える】
2015.07.13
2015.07.21
2015.08.03
2015.08.17
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。