私立高校と公立高校の5.8倍の格差

画像: PhotoAC acworks

2015.09.30

ライフ・ソーシャル

私立高校と公立高校の5.8倍の格差

中土井 鉄信
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

「私立高校に行くにはお金がかかる。できれば、公立高校に進んでほしい」、そんな風に思っている保護者はまだまだ多いことでしょう。この文章は、経済的負担の格差を乗り越え、公立よりも付加価値の高い教育サービスを行っていくために日々奮闘している私立高校の先生へのエールとして書きました。


私立が71万5,644円、公立が12万4,441円

「私立高等学校等授業料等の調査」をご存知でしょうか。文部科学省が発表しているデータで、私立の幼稚園、小学校、中学校、高校(全日制)の入学時の初年度生徒等納付金(年額)の一人当たりの平均額をまとめたものです。

平成26年度に私立高校(全日制)に入学した生徒がいるとします。

「私立高等学校等授業料等の調査」によれば、彼の、彼女の保護者が学校に支払った生徒等納付金平均額は、71万5,644円です。内訳は、授業料が38万3,598円、入学料が16万1,580円、施設整備費等が17万0,466円。


これが、公立高校に入学すると・・・
まあ、私立高校よりは安いんだろうとは予想がつくでしょう。
では、その差は?

平成26年度に公立高校に入学した生徒がいるとします。彼の、彼女の保護者が学校に支払う生徒等納付金平均額は12万4,441円。私立高校とは60万円近く違います。内訳は、授業料が11万8,800円。入学料は5,641円。施設整備費等は公立高校ではかかりません。


私立が、71万5,644円。公立が、12万4,441円。私立高校に入学すると、公立高校よりも初年度には5,8倍のお金がかかるという計算ですね。


このデータを見て、私の頭に浮かんだのは、私がコンサルティングを実施し、理事を務めていた私立高校の先生たちの顔でした。この5.8倍の格差を、私立高校の先生たちはどのように捉えたかが気にかかりました。


できれば、公立高校に進んでほしい、という思い!

5.8倍の格差。もちろん、公立高校の社会的な評価には、長い歴史や、公立高校の先生方の努力もあるでしょう。しかし、この経済的な負担の格差が、「できれば地元の公立学校に入って欲しい」という高校選択のベーシックな発想を下支えしているのは疑問の余地がないところでしょう。


日本全国に公立学校よりもはるかに人気のある私立高校は数多くあります。しかし、公立学校への根強い人気はがまだまだ健在です。「私立高校に行くにはお金がかかる。できれば、公立高校に進んでほしい」、そんな思いをもつ保護者が依然、日本全体をみればマジョリティーであるのは確かです。

昨今、公立と私立の経済的な負担の格差は、「高等学校等就学支援金制度(新制度)」や自治体の学費補助金などで狭められる努力はされています。しかし、一方で、私立高校の授業料の平均は、毎年のように上がっています。平成21年の私立高校の授業料の平均35万4,731円でしたが、平成26年度には38万3,598円となっており、この5年間の間に2万8000円ほどが値上げされています。少子化による経営悪化で一部の私立高校が授業料の値上げを余儀なくされているためです。

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中土井 鉄信

合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。

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