概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
◆「考える」ことのリテラシー教育
「読み・書き・そろばん」―――世を生きていくための基盤能力として昔の人はこの3つをあげました。こうした万人が修養すべき基盤能力を英語では「リテラシー(literacy)」といいます。昨今、その概念の適用は、情報リテラシー、メディアリテラシー、金融リテラシー、経営リテラシーなど、さまざまに広がっています。
直面する状況や扱う情報がますます複雑になるビジネスの現場において、物事をきちんと考える能力は、まさにリテラシーとして求められています。私たちは物事を考えているといっても、どれだけきちんと思考できているでしょうか。単に頭の回転が速いとか、記憶力がいいとか、文章力が優れているとかの能力の高さが、必ずしも業務パフォーマンスや事業推進力、リーダーシップ、自律的な働き方に比例していないことを私たちは知っています。また、知識はたくさん持っているのに見識がない人、語学力があってもその言葉で自分の意見を書けない人をそこかしこで見ています。考える能力のもととなる読み、書き、計算、知識記憶はあるものの、考える切り口を見つけることができない、考える内容を豊かに持つことができない、考える自分を力強く導くことができないというのが、多くのビジネスパーソンに起こっていることです。
ビジネスパーソンに向けた思考の基盤能力を養う教育プログラムは、すでに広がりをみせています。「ロジカル/クリティカル・シンキング」や「デザイン・シンキング」がそれです。これらの思考技術は、職種・業界を問わずどんなビジネスパーソンにおいても有効なものでしょう。ただ、教育的観点からすると、この2つの思考フレームではカバーしきれない領域の思考技術訓練がみえてきます。そこに着目したのが以降のシリーズ記事でご紹介する「コンセプチュアル・シンキング」です。
◆「知・情・意」の思考
哲学者カントは、人間の精神のはたらきとして「知・情・意」を考えました。人間の思考は当然そうした精神のはたらきの影響下にあります。その観点からながめると、人間の思考活動として次の3つがみえてきます───すなわち「知の思考・情の思考・意の思考」です。
例えば思考のなかでも、「鋭く分析する」「賢く判断する」「速く処理する」といったときの思考は、「知」のはたらき主導でなされる種類であるように思います。一方、「人の気持ちをくんで考える」とか「心地よさを形にする」「美しいを表現する」ときの思考は、「情」のはたらきに引っ張られているように思います。さらにはもう一つ、「深く洞察する」「綜合してとらえる」「意味を掘り起こす」といった思考は、「意」のはたらきが影響する種類とみることができます。
次のページ◆“コンセプチュアルに考える”場面はあふれている
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
2016.02.05
2016.02.25
2016.03.06
2016.03.14
2016.03.22
2016.04.04
2016.04.13
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2016.06.02
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。