営業利益率50%強、日本の製造業ではダントツの高収益を誇るキーエンス。同社はまた、30歳代で1300万超のスーパー年収でも知られる。謎に包まれた実態に迫るため同社から話を聞いた。
第四回
「徹底して当たり前のことを貫く」
「世間からは変わった会社、と言われているのかもしれません。しかし、我々としては、当たり前のことを当たり前にひたすらやり続けているだけなのです(キーエンス経営情報部)」。
■何ごともすべてゼロベースから
高収益を生み出す仕組みは企画・開発力とコンサルティング営業力、高収益を支える体制はファブレスと直販システムである。その仕組み、システムを動かすのは極めて優秀な人材である。このような企業はもちろん一朝一夕にでき上がったわけではない。
キーエンスはどうしてこのような特異な企業となり得たのだろうか。その本質は原理・原則(経済原則)の徹底にある。
キーエンスには交際費がない。ゼロである。なぜならばトップからマネジャー、そして営業マン一人ひとりにいたるまで「得意先を接待することなど一切ない」からだ。ビジネスとは突き詰めれば価値と対価の交換である。提供した商品に顧客が価値を認めれば、適正な対価が支払われる。それ以外に余分な要素が入り込む余地などないと考えるキーエンスは、ビジネスの原理・原則にこだわる企業である。
だからこそ価値を認めてもらえる商品開発に全力を注ぎ、顧客が価値を理解できるように営業はコンサルティングに励むのだ。
しかも顧客と接する際には、いつもゼロベースからのスタートを鉄則とする。もちろん過去の事例を参考にすることはあるだろう。しかし顧客は一社一社必ず異なる。仮に同じ顧客でも生産ラインごとに抱えている問題がまったく同じということはあり得ない。だから「案件に対しては必ずすべて一から考え直すこと」がルールとなる。
当たり前と言ってしまえばそれまでだが、これを徹底できる企業はそう多くはないはずだ。たいていの場合省力化やコストパフォーマンスを高めると言ったお題目のもとに、自社都合で「カタチ」を作りそれにあてはめて処理しようとする。
しかしカタチは、それが作られた時点ですでに思考停止のリスクを抱えている。人は安きに流れやすい生き物である。カタチがあればわざわざゼロから考え直すよりも、そのカタチに何とかあてはめて思考を節約しようとする。そのとき顧客の問題を本質的に解決すべきベクトルとのズレが起こる。このズレを絶対に認めないのがキーエンスである。
原理・原則といえば、キーエンスには極めて厳格な内規がある。会長、社長はもとより一社員にいたるまでその身内が社員として採用されることは絶対に許されない。キーエンス流ビジネスでは私情が入り込むのは御法度だからだ。特定の大学や特定の研究室とのパイプもない。採用にあたっては人物評価がすべて、なのだ。
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FMO第4弾【株式会社キーエンス】
2008.02.13
2008.02.05
2008.01.30
2008.01.22