ようやく日本からも、正真正銘、ワールドクラスのネットサービスが生まれた。GPSとGoogleマップを使い、自分が訪れた場所にメモを残す『メモリ』。世界の見え方を変える可能性のあるサービスの本質に迫る。
第3回
「ビジネスモデルは?」
■続くのが見たい
「正直なところ、ビジネスとしては考えていないんです」
メモリを使って、どういうビジネスを展開しようと考えているのか。そう尋ねて大川氏から返ってきた言葉には一瞬、耳を疑った。
「もちろん広告メディアとしては十分使えますよ。地域とタイミングを限定してクーポンを配信することもできるし、いろいろ使い道は考えられる。メモリに書き込みをする人の属性を考えれば、絞り込んだマーケティングツールにもなると思います」
にも関わらず、あえて当面はビジネスとしての展開を考えないのはなぜか。根底にあるのは、メモリに賭ける大川氏の心情である。
「僕がいま、いちばん考えているのは、僕が死んじゃったときにメモリがどうなるか。ほんと、心配で仕方がない。たとえば法人所有にしておくと、株式が相続で分散したりして法人ごとメモリが途絶えてしまったらどうしようとか・・・。それでは困るんです。僕の孫が、僕の書いたメモを見れるようになっていてほしいし、永遠に残るという前提で書くから良いメモを残そうという気合いも入るんです」
自分の死後にまで自分が立ち上げたサービスが続くことを考える。ドッグイヤーといわれスピードだけが重視される情報社会の中では、極めて異質な指向性である。しかし、ドッグイヤーなどという世知辛い時代が始まったのは、わずかにこの十年ぐらいのことに過ぎない。それ以前の世の中で何かを成し遂げようと志した人は、みな、大川氏と同じ気概を持っていたのではなかったか。
「僕の場合、それほどたいそうなことを思っているわけでもなくて、ただ続くのを見たいんですよ。実際には自分で見ることはできないけれど、百年後、ある場所に自分の孫がやってくるじゃないですか。そこで百年前に僕が残したメモを読んで、へえ?おじいちゃんって、ここでカレー食ってたんだって。そういうのって良いと思いませんか」
サービスの根幹には大川氏の壮大なロマンがあるのかもしれない。あるいはメモリこそはIT化が進んだからこそ可能になった、人が生きた証のデータベースともいえる。
「Wikipedia的な運営も選択肢の一つとしてあるのかもしれません。ただ予算に責任を持つ人間がいなくなると継続性に問題が出てくるおそれがある。悩ましいところですね」
▲オフィス風景
だだっ広いオフィスをわずかに数人で使う。
がらんとしたスペースが想像力を刺激するのだろう。
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FMO第17弾【株式会社MemoLi】
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