わずか3年で約100店を新規出店。23区内「どこへでも」配達を実現するためにカクヤスが採った拡大戦略だ。しかし、結果はぼろぼろ。全店の半数以上が赤字となった。崖から転げ落ちかけた同社を救ったのが、Amazon、アスクルに並ぶ『カクヤス・モデル』である。
最終回
「起死回生の飲食店営業」
■殺し文句は「困った時だけ、連絡ください」
「ギリギリの綱渡りというより、すでに片足が落ちてる、みたいな。出口が見えないトンネルをどんどん掘り進んでるような感じです」
2000年から2003年にかけて約100店舗を出店し、都内117店舗体制を実現したカクヤス。『どこへでも・いつでも・どれだけでも』は実現したものの、赤字店が50店以上ある。このままでは倒産必至、追い詰められた佐藤社長が打った最後の策が、まさに起死回生の一手となった。
「もしかしたら家庭用のお届けって永遠に利益が出ないんじゃないかって観念しましたよ。もちろん、そんなこと誰にも言えませんけれどね。じゃあどうするんだって改めて考えてみると東京は、外食比率が異常に高いエリアなんですよ。だったらダメ元で飲食店をもう一度、攻めてみるかって」
都内には飲食店が約11万軒もある。これをカクヤスの全117店でカバーすればどうなるか。単純計算で1店舗あたり1000軒だ。これぐらいならローラー作戦で攻めることが可能である。
「しかも、元々うちは業務用からスタートしているから営業マンがいる。営業ノウハウもある。だからといって正面からぶつかったりはしませんよ。そりゃ競争相手もいますし、いろいろまずいですからね」
カクヤスが採ったのは『困ったら連絡ください』作戦である。飲食店には当然、なじみの酒販店が付いている。いきなりのスイッチは難しい。ところがこうした酒販店は長年の付き合いにあぐらをかき、顧客視点が決定的に欠けていたのだ。
「注文は必ず前夜にしなきゃならない。配達は一日一回まわってくるだけで融通が利かない。お客さんからすればまったく不便なシステムなんだけれど、みんなそんなもんだと諦めてる。そこにうちは、『困った時だけご連絡ください。いつでも、どれだけでも、もちろんどこへでもお持ちしますから』って。これだけを営業マンに言ってまわらせました」
効果はてきめんだった。特に小さな飲食店ほど、本当はその日、必要な量だけを仕入れたいのだ。カクヤスの作戦は、潜在ニーズを見事にすくいあげるモデルとなった。
「たとえはちょっと悪いんですが、まさに入れ食い状態。飲食店ルートに力を入れだした2003年からの3年間で、業務用と家庭用の売上比率がひっくり返ってしまいました。今では都内3万軒以上の飲食店さんとお取り引きがありますから。ほとんど30%ぐらいのシェアになるわけで、これは断トツだと思います。びっくりですよね」
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FMO第20弾【株式会社カクヤス】
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2009.02.03