~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
第二章 一人前への長い道のり
翌日早速森永から電話がきた。
「宮田。 柴田さんが今なら時間取れると行っている。
すぐあがって来いよ」
非鉄金属本部のある15階に、9階から脱兎のごとく駆け上がった
宮田は、森永から柴田を紹介された。
「関さんの下でやっています、宮田と申します。
よろしく御願いします!」
「おう、よろしく。 君のことは関から聞いているよ。 関と俺は
同じ大学出身で同期なんでな。 で、何を知りたいんだい?」
しわがれた声で柴田が尋ねた。
柴田は、身長185cm程もある大柄な体格で、髪はオールバック、
きらきら光る銀縁めがねの奥から知的な感じのする眼光が放たれて
いた。
< ちょっと怖そー・・・。 こういうおっさんを、いわゆる
経済やくざっちゅうんやろな・・・ >
「はい。 日本非鉄金属の宇都宮工場を担当してまして。
設備や機械関係の売込みを担当し、毎日色々な設備のカタログを
持参して売り込みのトライをしているのですが、ぜんぜん相手に
されずうまく進みません。
誠に恥ずかしい話なんですが、正直何をどう売っていいのか皆目
わからず、困っています。 関さんに相談しても、
≪ そんなこと、自分で考えろ! ≫
の一言で終わりですし・・・」
「ははは。あいつらしいな」
「機械の売り込みのことを非鉄製品の販売の方に聞くのもおかしい
のですが、よろしく御願いします」
そういいながら宮田はぺこっと頭を下げた。
「全然おかしくないよ。 むしろ当たり前のことだ。もっと早く
くればよかったのに」
宮田は柴田の言葉に驚いた。
柴田は、笑顔から急にまじめな顔になって続けた。
「宮田君。 君にひとつ聞くが、日本非鉄金属の宇都宮工場は、
わが社から何を買いたいと思っているのかな?」
「何をって?? それは、高性能で優秀な機械や設備を安く
買いたいと思っていると思いますが・・・」
「そうなのかな? それも大切なことだけれども、それだけなの
かな? もし、それだけなら、別にうちじゃなくても中堅の工具
商社や、メーカーさんと直接交渉して買えばいいんじゃないかな?」
宮田は柴田からそう言われて、以前関から自分のやり方を中小工具
商と同じだと叱られたことを思い出した。
「君がもしそう思い込んでいるとしたら、君はその考え方を変えない
限り、何年やっても一件たりとも大型の設備商談をまとめることは
出来ないよ。
それと、もうひとつ聞くよ。 日本非鉄金属という会社は、何をして
いる会社かな?」
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商社マン しんちゃん。 走る!
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