~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語 を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
【前号までのあらすじ】
海外の名だたる企業とビッグビジネスをすることを夢見て、憧れの
総合商社に入社したしんちゃんであったが、配属後すぐに地道な国
内商売の担当になってしまう。 同期が華やかな輸出入ビジネスな
どの海外取引、海外出張などグローバルなビジネスに関与しだし始
めているなか、自分は一体いつまで地味な国内商売に関与し続けな
ければならないのか? 一体いつになったら海外とのビジネスに
携わることができるのか? と、自分の抱いていた夢やあこがれと
現実のギャップに毎日悶々と自問自答する日々が続いていた。
3年目を迎えたある日、海外への飛躍の機会が突然転がりこんで来
た。 ただ、出張を命じられた国は、戦争真っただ中のイスラム
の大国、イランであった。
第三章 初めての海外出張
大日本商事テヘラン支店は、機械、鉄鋼、石油などの取引を中心とし
日本人駐在員数20数名を誇る中東における重要な支店である。
支店を構えて30年以上は経つ、大日本商事の海外支店の中でも伝統
のある海外支店のひとつであった。
「な、何だ?これは」
日本酒1ダースの箱を宮田からすっと差し出された永井店長は、目
を丸くして言った。
税関でイラン人の検閲官と同じような詰問を発した。
「君は本当に日本酒を持って入国してきたのか???」
「は、はー・・。そうですけど」
< え?? それって何なん??? そのリアクションって?
そやかてあんたが持ってきてってそう言うてたやないけ・・・>
「今まで恒例行事として冗談半分で東京からの出張者に日本酒の持
ち込みをお願いはしてきた。 だが、東京本社側もだれもそんなお
願いを真剣に受け取ってくれないし、今までで本当に持って来る
人間なんて誰一人としていやしない。
何故なら、イランの入国審査でとっつかまるのは目に見えている
からね。
だからいつもジョークのつもりで打電していたんだ。
本当に日本酒持って入国してきたのはこのテヘラン支店30年以上
の長い歴史の中でも宮田君、あんたが初めてだ!
それも何と何と、12本とは!」
宮田は照れ隠しで頭をかいてみたが、これってほめられているのか、
馬鹿にされているのかわからないなと感じていた。
< それにしてもジョークかい!? ええ加減にせーよ。 ほんま
・・・ >
長らく日本酒を手にすることがなかったのであろうか、うれしさの
あまり段々興奮してきた支店長は続けた。
「宮田君!!! 実はさらに今日は、君の同期でドイツから同じく
今日入国してきた石油部の両国君は、なんと、アダルトビデオを
3本も持って入国してきた。 それも貴重なドイツものだ。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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