~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
【前号までのあらすじ】
海外の名だたる企業とビッグビジネスをすることを夢見て、憧れの
総合商社に入社したしんちゃんであったが、配属後すぐに地道な国
内商売の担当になってしまう。 同期が華やかな輸出入ビジネスな
どの海外取引、海外出張などグローバルなビジネスに関与しだし始
めているなか、自分は一体いつまで地味な国内商売に関与し続けな
ければならないのか? 一体いつになったら海外とのビジネスに
携わることができるのか? と、自分の抱いていた夢やあこがれと
現実のギャップに毎日悶々と自問自答する日々が続いていた。
3年目を迎えたある日、海外への飛躍の機会が突然転がりこんで来
た。 ただ、出張を命じられた国は、戦争真っただ中のイスラム
の大国、イランであった。 そこでは、日本ではとても経験できそ
うにない体験が待っていた。
いよいよ海外の顧客とのネゴシエーション(交渉)が始まった。
さー百戦錬磨の中東のクライアントにしんちゃんはどう立ち向かう
のか?
< おいおい。 なんなん? これ・・・ >
宮田が注文したビールは運ばれてきたそばから生ぬるく温まってい
る上に、ビンの中の茶褐色でどろっと濁った液体の底のほうには何
か得体の知れないものが沈殿しており、ビンを持って振るとそれら
が不気味な浮遊物体となって舞い上がるのが見えた。
それを見たほかの皆は、誰一人としてそれを注文することなく、ミ
ネラルウォーターを注文していた。
宮田は、新たに持ち上がった交渉の難題事とムハンマド部長の顔を
思い出すと無性にむしゃくしゃし、思わず一気にイラニアンビール
を飲み干した。
ひとしきり食事が終わると、テヘラン店機械担当藤井が言った。
「皆さん。
僕はこれから弊社が情報収集をさせているイランのエージェント
に競合動向を調べるように依頼したいと思います。
彼らの情報網は大手企業のみならず、政府の中枢機能まで入り込
んでいます。
お金をばら撒けばこっそり機密情報を売買するという風潮があり
ます。
ただそれだけにうまく使わないといけません。
下手をするとこちらの状況を相手に全てばらしてしまうというこ
とも考えられます。
こればっかりは難しいところですが、例の欧州系2社が本当にテ
ンションレベラーを範囲外としているかどうかぐらいはリスクな
く確認できるのではないかと思っています。
このエージェント連中にはそれなりの額のマージンを払っていま
すので、それに見合った仕事はいつもしてくれます」
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商社マン しんちゃん。 走る!
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