全国で市民病院問題が噴出している。すでに廃止を決めた自治体、大幅な規模縮小を図る自治体がある。そんな中、民間移譲での再生を企画、自ら再選挙に打って出ることで信を問い、強力に改革を進めているのが樋渡武雄市長だ。その革新的な改革プロセスを紹介する。
最終回・特別インタビュー 「日本の医療崩壊を防ぐモデルケースを創りたい」武雄市立武雄市民病院 最高顧問 鶴﨑直邦氏
今回のFMO取材に当たっては、武雄市から病院を移譲される医療法人池友会グループからも話を聞いた。以下は、池友会から派遣され武雄市民病院で最高顧問を務めている鶴﨑氏へのインタビューである。
■そもそも池友会とは、どんな組織なのでしょうか。
-急性期医療、救急救命医療を専門に福岡県内で、250床から300床ぐらいの規模の病院を4つ経営している医療法人です。病院のほかにも看護学校を3カ所、回復期リハビリテーション病院を全国に4カ所展開しています。
■急成長している組織につきものなのでしょうが、さまざまな噂があるようですね。
-医師会さんや大学病院、国公立の病院などからもいわれのない批判を受けているようです。あまりにも我々がラジカル、つまり患者さま至上主義を実践するからだと思っています。
■にも関わらずどんどん規模が大きくなっているのは、なぜでしょう。
-我々は昭和49年、36年前にはわずか19床の病院からスタートしました。それが今では全職員あわせて5000人となっています。いろいろ言われますが、我々のやってきたことはただ一つだけ。目の前の患者さんをひたすら助ける、治す。それだけに集中してやってきたのです。その姿勢が今の評価につながっているのだと考えています。
■今、地方では公立病院の疲弊が激しい。その原因について、どうお考えですか。
-日本の医療、特に地方の医療はまさに崩壊寸前ですよ。その理由ははっきりしています。直接の原因となったのは新臨床研修制度でしょう。研修医が自分の意志で自由に研修先を選べるようになった。当然、誰もが行きたがるのは医師としてしっかり勉強できて、しかも生活の便利な都会じゃないですか。誰が好き好んで田舎の病院に行くでしょうか。
■その新しい研修制度ができるまでとは何が変わったのでしょう。
-以前は大学病院の医局が人事権を掌握していたのです。医師の配分はすべて医局が決めていた。ところが医師が自分の意志で好きなところへ行けるようになって、結果的に誰も大学に戻ってこなくなった。これは大学病院にとって死活問題です。そこであちこちに派遣していた医師を引きはがしにかかりました。
■医療現場で医師不足が起こったわけですね。
-日本の医療を支えてきたのは、良質の勤務医なのです。その誇り、良心によって彼らは激務に耐え治療に従事してきました。こうした状況は国公立も民間も変わりません。開業医が夜には早々と診察を終えている一方で勤務医たちは、24時間体制で救急治療にも携わってきたのです。ところが大学病院が医師を呼び戻しにかかったために、現場では深刻な医師不足が起こるようになりました
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FMO第28弾【佐賀県武雄市長、武雄市立武雄市民病院】
2009.10.29
2009.10.22
2009.10.15
2009.10.06