「モチベーション」はますます一般語として普及しつつある。モチベーションを考えることは、「働くこと」の問題を意味論・価値論へシフトさせるよい流れである。
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外来語に乗せた概念の普及―――
「マネジメント」しかり、 「リーダーシップ」しかり、 「イノベーション」しかり……。(たいていは『HBR(ハーバード・ビジネス・レビュー)』あたりが仕掛け人)
で、いよいよ次は「モチベーション」 。
もちろんビジネスの現場ではすでにこの言葉は人びとの口々に上がっているのだが、
その頻度ほどには「モチベーションとは何か?」が議論されていないし、
そもそも「自分のモチベーションはどこにあるか?」といった根っこの自問に、各々が答えられてもいない。
そんな「モチベーション」概念の普及に加速をつけそうなのが、
ダニエル・ピンク氏が昨年末に刊行した
『DRiVE : The Surprising Truth About What Motivates Us』である。
(翻訳版は間もなく出版されるとのこと)
アル・ゴアのスピーチライターをしていたピンク氏は、
これまでも『Free Agent Nation』や『A Whole New Mind』など
トレンドセッター的な志向で著述を重ねてきた。
そして彼が今回、キーボードを走らせたのが「モチベーション」である。
相変わらず流行りの表現で事を切り出す能力は逸品で、
この著作のバズワードは、
○Motivation 3.0
○Type X vs Type I
○The Three Elements; Autonomy, Mastery, Purpose
「モチベーション3.0」に関しては、先日発売になった『週刊東洋経済』誌にも特集が組まれていた。
ピンク氏は、モチベーションを3段階の進化でとらえる。
(原著では、オペレーションシステムのアップグレードという表現で書いているが)
・モチベーション1.0=生物的に生き残ろうとする動機
・ 〃 2.0=賞罰(アメとムチ)による外発的動機:Type X の働き方
・ 〃 3.0=自分の内なる声による内発的動機:Type I の働き方
そして、モチベーション3.0・Type I の働き方の時代にあって大事な要素は、
「自律性」「卓越性の追求」「大きな目的」だと指摘する。
私はこの本を彼の以前の著書と同様に面白く読ませてもらったのだが、
根本的には、モチベーションを時系列的に3つでざっくりとらえたそのざっくりさ加減に同意しない。
(まあ、ベストセラーになるものは、そうした論の思い切りよさ・単純さがないといけないものだが)
人びとの働く動機は、そもそも時系列進化ではなく、
空間的まだら模様としてとらえられるべきだと思う。
(これはマズローの五段階欲求も同様だ)
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【働くことの意味論・価値論】
2010.04.11
2010.04.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。