多くのビジネスパーソンが立ちはだかる仕事の「壁」について解説。
ビジネスマン人生には、越えなくてはならないいくつかのハードルが待ち受けている。
【3年の壁】
仕事に慣れ、会社のしきたりにもなじみ、世渡りのスキルも身について、なんとかビジネス界を遊泳することができるようになるのに、3年はどうしてもかかるというのが通説になっているが、自分の実感値としてもそれは当たっているように思う。
まずは、この3年の「修行」を辛抱できるかどうか、が第一のハードルである。
ここをクリアして次の段階に進めない若者が昨今増えているという。クリアできない理由は色々あると思うが、大きくは、子供の頃から我慢するしつけがされていないことと、情報過多で周囲の情報に踊らされ隣の芝生が青く見えていること。そして自分の将来の状態目標を持てていないこと、の3つにあるように思う。
自分探しの定義が軽くなっている。自分探しの定義を「自分のやりたいことは何か?」程度に考えているとすれば、それは目の前の仕事が「やりたくない」ことであれば、安易に辞める道を選んでも不思議はないだろう。組織の中で生きていく上では、やりたくないことでもやらなければならない時がある。すべてのことから何かを得るつもりで取り組むことは簡単ではないが、それをしなければ生きていけないのが組織人の宿命というのも現実であろうと思う。やりたくないことを一切やらないで生きていきたいのであれば、独立して好きにやるか、世捨て人となって人と接しないで生きていくしかないのかもしれない。目の前の仕事がやりたくない仕事だからと、腐り、組織の中にいるのに人と接しないようにしている、組織(企業)内世捨て人になっている人も出てきているとすれば、由々しき事態である。
【管理職の壁】
次のハードルは、係長や課長など、会社から部下を預かり組織を率いる立場になれるかどうかである。このハードルは本来は、第一のハードルよりも格段に高いはずのものだ。なぜならば、組織を率いる時には、自分自身が一人前のプロとして単独で仕事する時とは、違う能力と視野が必要になるからだ。現実は、第一のハードルよりもむしろ第二のハードルが低くて、年齢が来れば、あるいは一社員時代に成績を上げたというだけで、ご褒美として管理職のポストを上げている企業が少なくない。
このハードルに立ち向かうに当たっては、自分ひとりで頑張るのではなく、人を育て、人の力を組み合わせながら大きな仕事をやり遂げられるようにならなければならないのだが、ここで自分の殻を破ることができずに、挫折する人が多い。
(専門職的な仕事で、全員が必ずしも管理職になる必要はないというようなことは別として)
人をよく観察し、弱点を補う指導ができ、強みを強化するコミュニケーションができるかどうか。複数の人の強み弱みを理解し、最強のチームを組成することができるかどうか。方向性とゴールをわかりやすく表現して共有するコミュニケーション能力を磨けるかどうか。人の成長を待つという、一社員時代とは別の種類の我慢強さを身につけられるかどうか。ことごとく自分の殻を破る必要があるのだが、殻を破れないと、ここで大きく成長が鈍化してしまうことになる。
【事業責任者の壁】
第三の壁は、事業部長や役員となって、事業全体を切り盛りする立場になる時である。ここの段階になると、ほぼ経営者と同じ種類の能力が必要になる。人、モノ、金といった経営資源を駆使して、利益を上げ続けていくという責任がある。
ここでの能力は、現状分析力と、将来に向けた仮説能力といった、目に見えないものを見えるようにする能力となり、ハードルは一気に上がる。不思議なことに、「目に見えないものを見えるようにする能力」というこれまでの中間管理職時代とはまったく別の種類の能力が必要だとわかっているにも関わらず、何の教育もせずに、一社員、中間管理職時代の延長上で「ただ頑張らせるだけ」という会社が多いのである。
会社も具体的な要望をせずに、部隊と戦略を丸投げするものだから、結局グチャグチャになり社員から後ろ指を指され、経営者にがっかりされて、幹部として最悪の状態で会社を去る人が多くなる。ビジネスマンとして幸せに人生を終えたかったら下手に幹部などにならないほうがいいということになってしまう。
この段階になると年齢もかなり上の方になっているものだから、それまでとは違う能力を求められても容易に殻を破ることができない。大きな覚悟と相当な勉強が必要になるのである。
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。