「言った」「言わない」の感情論争に陥りがちな上司と部下。そんなときに大事な処方箋は、「大きな絵」をともに見晴らすことである。
――――“One world under the sun.”
(世界はひとつ。みんな同じ太陽の下)
むかしどこかで、こんな広告コピーを見た記憶があります。
世界のいろいろな地域では、いまだに他国との戦争や国内紛争が絶えませんが、そんなときこの一行はとても考えさせられるものがあります。
もしいま、巨大な隕石が地球に衝突確実という出来事でも起これば、我々は「一地球人」として戦争をやっている間ではなくなるでしょう。
◆上司と部下はキツネとタヌキ?
上司と部下という二者の関係はとても不安定です。
そもそも上司と部下は、たまたま同じ会社に入って、会社の配属によってたまたま引き合わされただけの関係です。
多くの場合、上司は部下を選んだわけでもありませんし、部下は上司を選んだわけでもありません。
上司と部下は互いに不完全な人間同士ですから、職場で四六時中、一緒にいると、互いの欠点がいやおうなしに見えてきます。
“Familiarity Breeds Contempt”―――親しみは侮蔑を生む、
そんな英語のことわざもあります。
部下にとって上司の返答は「このあいだ言ったことと違うじゃないですか」と文句も言いたくなるような一貫性のないときも多いですし、「問答無用」とばかりに理不尽な業務を押し付けてくるときもあります。
また、上司は上司で、部下の進捗が思うようにいっていないと「なんでこんな簡単なことが・・・」のように小言をもらしたり、部下があれこれぐずると「これは全社方針だから」と印籠の一言を出したりします。
そして、険悪なムードが過熱すると、「言った」「言わない」の感情論争に。
上司も部下も、いとも簡単に感情の溝にはまりこんで建設的な関係を築けない。
「所詮、給料をもらうためには仕方ないさ」とキツネとタヌキの化かし合いで適当に距離を保つ、職場ではそんな関係状況も多く見受けられるものです。
◆二点より三点が安定する
基本的には不安定であり、冷めた関係になりやすい上司/部下関係を、安定的かつ友好的なテンションで維持していくにはどうすればよいか、これはずっと以前から会社組織における重要なテーマのひとつであり続けてきました。
そのテーマに対する解のひとつが、上司と部下とで「第三点を共有する」ことです。
上司と部下という二点で感情的に閉じていると、何かと硬直化して前に進んでいこうとするエネルギーがうまく出てきません。
そんなとき、互いが共同して見つめられる第三点を設定して、そこに意識を開いていくわけです。
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【賢い部下ほど上司を活かす】
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。