改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりとものを言う知事たちだ。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせてくれる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業にたとえるなら経営者である。さまざまな抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となるだろう。知事の改革を紹介するシリーズ、今回は、佐賀で改革を断行する古川知事である。
第3回
「時間も、コストもかけずにできるからこそ改革」
■おのおの方、名を名乗れ
「ひらめいた瞬間、ビンゴって思いました。いけるという確信がありましたね」
知事に就任した古川氏が、いの一番に県職員に指示したこと。それはものすごく単純なことであり、もちろん誰でもできる。実施するために何かコストがかかるかといえば、そんなことも一切ない。
「簡単ですよね、電話を受けたときに自分の名前を名乗るだけなんですから。条例も規則も変える必要はまったくありません。誰でも、次に電話を取った瞬間から実行できるはずでしょう。しかも、まわりのみんながやり始めれば、誰だってやらざるを得なくなる」
しかし、県庁には4000人近くの職員がいる。大きな組織である。これだけの人間が、いくら簡単とはいえ、「せーの」で一気に同じように動くものだろうか。
「びっくりするぐらい早く浸透しましたね。一ヶ月後には9割以上の職員が名乗っていました。これで『いけるな』と力強く思いました」
ヒンズーの教えによれば「行動が変われば習慣が変わり、習慣が変われば人格が変わる」という。電話を受けたときには、まず自分の名前を名乗る。ただ、それだけの行動の変化は、確実に県職員の人格を変えていった。
「全国を営業で回っている人からおほめの言葉をいただくのです。佐賀県庁の方は、みなさんとても親切だと。少しでも迷っていたら、すぐに声をかけてもらえる。これが他の県庁だったら、そうはいかないようです」
県庁新館一階には総合案内ブースがある。そのまわりには、不思議と明るく華やいだ感じが漂っている。日当たりのいい場所にブースが設置されていることはもちろん、そこから響いてくる声がとても耳に心地よいからだ。
「もちろん、なかなか動けない人もいます。その人たちのことも理解できるのです。県庁に入って30年ほども続けてきたやり方を、今さらいきなり変えろと言われても、それは難しいでしょうから。彼らにだめ出しするつもりはまったくありません。ただ、私が知事になって7年、その間に入ってきた職員には、今のやり方が当たり前になっている。この人たちを育てていくことが大切なんです」
知事の視点は、未来志向なのだ。
■汝、考える葦になれ
「組織改革も断行しました。できるだけ現場に権限を移譲することが狙いです」
佐賀県は本部制を採っている。統括本部、くらし環境本部、健康福祉本部、農林水産商工本部、県土づくり本部に経営支援本部。統括本部を司令塔とするカンパニー制といっていいだろう。その狙いは何だったのか。
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