改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりとものを言う知事たちだ。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせてくれる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業にたとえるなら経営者である。さまざまな抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となるだろう。知事の改革を紹介するシリーズ、今回は、佐賀で改革を断行する古川知事である。
最終回 「視察に行く県から、視察団が来る県に」
■カイゼンに学ぶスマイルプロジェクト
「トヨタさんのカイゼンを勉強に行きました。スマイルプロジェクトの一環です」
スマイルプロジェクトとは、Saga Movement for Innovation LEgendの頭文字をとったもの、業務改革・改善を進めるために県庁全体で取り組んでいる活動だ。カイゼンといえば本家はトヨタとばかりに、企業に教えを請う。そのしなやかさが古川流である。
「すでに成果が出ているんです。本当に書類の置き方一つ変えるだけで、ムダな動きがなくなるのだから驚きです。県パスポートセンターでは、明らかに事務仕事が早くなりました。目から鱗が落ちるとは、こういうことをいうのでしょう。」
今でも佐賀県は申請日を含め、5日間(土日祝日を除く)でパスポートを受け取ることができる。申請のために県の出先機関に出向く必要はなく、最寄りの市町村役場で受理してもらえる。それでいて申請日を含め、5日間でパスポートを受け取れるのは、佐賀県だけだ。これがさらに短縮され、今後さらに4日間を目指しているという。
「もう少し自慢させてもらうと、このところ視察の流れが逆になりました。つまり、以前なら当県職員が何かを学ぶために他県に視察に出向いていたのです。ところが今では先進地視察ということで、他県から佐賀にお見えになる」
先鞭をつけたのがトライアル発注だろう。知事が就任直後に始めた全国初の取り組みだ。県内中小企業が開発した製品などを、まず県がトライアルで発注する。その結果を県が評価しお墨付きを与える。同時に官公庁での受注実績を作ることで、営業力が弱い中小企業の販路開拓を支援する。
「これを始めて以来、県庁に視察に来られる方が、一気に増えました。アイデア一つで、中小企業活性化を支援できることがわかったのは、私にとっても自信になりました。そもそも、佐賀県はモノづくりが得意、何しろ佐賀県には企業からすれば理想の人材が揃っているのだから」
佐賀人は極めてまじめなのだ。いったん職に就けば、定着率は極めて高い。少々きついこと、厳しいことがあっても耐えぬく心の強さも兼ね備えている。
「しかも佐賀は、人と人の絆やつながりが、まだしっかりと生きている土地柄です。だからこそでしょう、ここは消防団の組織率が飛び抜けて高い。日本一です」
佐賀の強みの一つが人にあることはわかった。では、他はどうなのだろう。
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佐賀県知事・古川康氏
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