部課長の対話力〈1〉~上司の対話が個と組織を強くする

2010.08.04

組織・人材

部課長の対話力〈1〉~上司の対話が個と組織を強くする

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ミドルマネジャーたちは日々、上へ下へとコミュニケーションを盛んに行う。部下への指示・命令、会議での討論、外部との折衝、上への根回し、会話・雑談などなど。……しかし、彼らは最も重要な何かを避けてはいないだろうか?


 ◆いま職場に「対話」があるだろうか!?
 世の部課長(組織でいわゆるミドルマネジメントにあたる人びと)に対し、次の問いを発したいと思います。

 □日本の働く現場では多くが疲れている。確かにマクロの眼で見ると「経済のグローバル化」や「企業の利益至上主義」「成果主義」が要因となって労働者を消耗させ、職場のギスギス化を促進させているように説明がつく。しかしその前に、ミクロの眼で見て、部長や課長は職場で1人1人の働き手に語りかけることをしているだろうか?

 □「大学新卒入社者は最初の3年で3割が辞める」「離職理由の4割が能力適性と配属とのミスマッチであるらしい」といった調査データを眺めて、「我慢をしなくなった若者を扱うのは難しい時代だな」と静観することは簡単である。しかし部長や課長は、ある日突然「会社を辞めたいんですが」と言ってきた社員に、それまでの日頃、彼(彼女)とどんなコミュニケーションを交わしていたのだろう?

 □世の中は戦略ブーム、知識ブーム、変革ブーム、制度ブームである……しかし、組織を本当に変えるために、そもそも経営者と働き手、上司と部下の間にどれだけの対話があっただろうか?

 □「近頃の若者は○○できない」「最近の新入社員は○○が弱い」といったイマドキの若者論はいつの時代にも年長世代の口から漏れてくる。しかし、同時に耳を澄ませば、こんなことも漏れ聞こえてきはしないだろうか?―――「いまどきの部課長は保身に走っている」「いまどきの上司の背中は貧相だ」「最近の中間管理職はトップからの命令と数値目標を現場に下すだけの伝書鳩管理職だ。みずからの言葉で真正面から何かを語ってくれたためしがない」。

 □部課長たちは研修やセミナーでコミュニケーション術の習得に熱心である。しかし、ピーター・ドラッカーはこう言っている。―――「どのように話すかという問題が意味を持つのは、何を話すかという問題が解決されてからである」 (『プロフェッショナルの条件』より)と。そう、術・スキルをうんぬんする前に、部課長たちは「語るべき何か」をどれほど豊かに内面に湛えているだろうか?

 □確かに部課長は日頃の職場で、業務指示や目標徹底など通知すべきことは多く抱えている。しかしそれら命令や情報とは別に、「仕事とは何か? よりよく働くこととは何か?」のような誰もが抱く根っこの問いに対して、どれだけ多くのことを肉声で語っているか、あるいは、語れるだろうか? そしてそもそも、部長や課長は一職業人として、語ることのベースとなる「観」をどれだけ堅固に持っているのだろうか?

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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