日本郵船が自社保有のコンテナ船を減らし、他社からのチャーター船に切り替える戦略を進めているという。今回は、この日本郵船の戦略転換をコスト構造の観点からみていく。
経営資源を獲得する際に考えなければならない事の一つに、その経営資源が必要となるそもそものビジネスを、自社で保有する固定費型にするのか、売上に応じて外部から調達する変動費型にするのかだ。
日本郵船が自社保有のコンテナ船を減らし、他社からのチャーター船に切り替える戦略を進めているという。つまり、固定費型のビジネスから変動費型にコンテナ船事業の舵を切り替えるということだ。
今回は、この日本郵船の戦略転換を例に、固定費型のビジネスと変動費型のそれとの違いをみていこう。
「日本郵船はこれまで運航船舶をほぼすべて自前でそろえたきたが、2008年末の金融危機を境に戦略を転換した。2009年3月末には113隻あった自社船を今期末を目処に85隻へ2割超削減、5年後には3割減となる60隻まで減らす。代わりに1回ごとや1~3年契約のチャーター船を増やす(参考:2010年12月16日 日本経済新聞15面)」という。
現在では、「自社船を中心に運航規模を拡大するのが海運業界の潮流で、郵船の戦略は逆張りといえる。商船三井は100隻体制のコンテナ船を16年3月末をめどに120隻に増やす。欧州海運最大手のA・P・モラー・マースクは、自社保有の超大型船を導入した。(参考:同上)」
日本郵船が固定費型から変動費型へコンテナ船事業を転換しようとする戦略の背景には、同社のコンテナ船事業部門の損益が2008年3月期の若干の黒字から2009年3月期に250億円程度の赤字に転じ、2010年3月期は554億円と赤字幅が増大したが、今期は一転、345億円の黒字を見込むとなったように、コンテナ船事業の損益の振れ幅が大きいことがある。
この様な環境下、自社保有の船舶を減らし、他社からのチャーター船を活用した変動費型のビジネスに切り替えることは、利益を安定化する効果を生む。なぜなら、船舶などの資産・設備を保有することは、売上に関わらずコストが生じる。資産・設備の稼動が十分に上がらなければ、それだけで赤字になってしまう。変動費型のビジネスであれば、そうした固定費が減り、売上に応じてコストとなるコンテナスペースを確保すれば良いので、利益を出しやすくなる。
それでは、変動費型のビジネスにデメリットはないかというと、利益が出やすくなる反面、大きく利益を上げることが難しくなる。なぜなら、売上に応じて、都度コンテナスペースを確保しなければならず、コストも同じように増加していく。時には、必要な資産・設備を確保できず、売上そのものを逃してしまうかもしれない。また、コストがサプライヤとの交渉によって決まるので、機動的な価格戦略が難しくなる。短期的な経営の自由度が狭まるのだ。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます