焼き肉チェーン「焼き肉酒家えびす」店舗で、生の牛肉を使ったユッケを食べた4人が死亡した集団食中毒事件を受けて、厚生労働省は規制の強化を検討しているとのこと。
焼き肉チェーン「焼き肉酒家えびす」店舗で、生の牛肉を使ったユッケを食べた4人が死亡した集団食中毒。
専用設備で肉の表面を削り取ることなどを求めている厚生労働省の「生食用食肉の衛生基準」を満たす生牛肉は、2008年以降出荷されていなかったが、衛生基準に罰則規定がないために、実際は焼肉店で生食のユッケなどが広く提供されていました。しかし、この事実を知っていた消費者は少数であったでしょう。私は、恥ずかしながら知りませんでした。
消費者が、飲食店で食事をするのは、安全な食材を使っているという信頼があるからであす。「従順ならざる唯一の日本人」と呼ばれた白州次郎氏が残した言葉は、日本人のプリンシプル(原理原則)の欠如を指摘していました。 焼き肉チェーン「焼き肉酒家えびす」 は、安全な料理を提供するという原理原則が欠如していたと言わざるを得ません。
一方、食の安全に責任を持つべき厚生労働省が、罰則付きの規制をすべきであったと思われるかもしれない。しかし、厚生労働省の
『食中毒統計資料』によると、今回の食中毒事件が起きるまでは、2009年以降は食中毒による死亡者はゼロでした。このような状況下で規制を強化するのは難しかったかもしれません。しかし、生牛肉のリスク及び飲食店出されているユッケの実状について啓蒙活動することは出来たはずですし、すべきであった。
厚生労働省は、今回の事件を受けて、生食用の肉を提供している飲食店への立ち入り検査を強化するよう各都道府県に要請する方針で、罰則をともなう食品衛生法に基づく、新しい基準を設けることも検討しているとのこと。
はたして、厚生労働省はどのような基準を作るのでしょうか。
現行の衛生基準に罰則規定を付加した場合には、短期的には国内の飲食店から「ユッケ」は姿を消すであろう。
かと言って、現行の衛生基準を安易に引き下げた場合には、今回の原発事故のように、「国の安全基準を満たしているのだから、免責されるべきだ」という無責任な飲食店が出てくるだろう。
何れにしても、メリット・デメリットがある。
今回の事件を受けて、消費者は生牛肉を食べることのリスクを認識しました。
そして、消費者の安全志向に応えられない飲食店は市場原理によって淘汰されるでしょう。
行政は、事件が起こった後に法で規制するのではなく、消費者に正しい情報を提供する啓蒙活動に尽力すべきであった。
このような事件が2度と起きないように、厚生労働省は飲食店の監督を強化すると共に、食中毒事件が起こったときには例外なく、業務上過失致死・業務上過失障害事件として、警察が捜査すべきと考える。
行政・企業・消費者が、 プリンシプルをもって行動することが求められています。
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2015.07.17
2009.10.31
籔 孝昭
AllAbout ガイド
金融機関で新規事業の立案や子会社の設立など企業経営全般に携わるとともに、大学や企業で「論理思考」や「マーケティング」に関する講義を行う。そこで、企業が求める人材と学生のギャップを目の当りにして、教育業界に転進。