医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。
第一回
「より良い医療を実現するために」
■大学医局と『民間医局』
「『白い巨塔』そのものだったんですよ、お医者さんの世界は。とにかく大学が強大な力を持っている。特に人事に関しては絶対的な権力です。それでいいのかって問題意識がそもそもの始まりですね」。
『民間医局』がスタートしたのは1999年、今からまだわずか8年前は大学の医局、学閥が医学の世界を圧倒的に支配していた。医学部を出た学生は否応なく出身大学の医局が指示した病院へと赴かなくてはならない。そこで数年を過ごした後、再び医局に戻されたり別の病院へ派遣されたりを繰り返す。その間の決定プロセスに当の医師個人の意思が反映されることはまずない。教授、医局の言とおりにするしか方法はない。
「もちろん、ずっとそのシステムで日本の医療は動いてきたわけです。それで良い医療を患者さんが受けられているのなら、何も問題はない。ところがどうもそうじゃなそうだと。たまたまたどり着いた病院がどこの系列かによって治療方針が決まり、受けられる医療が限定されてしまう。そんなのおかしいでしょう。なぜそんなことになるのかといえば、教授を頂点とする厳とした家元制度があるからなんです」。
中村社長の問題意識は自然に、医師をがんじがらめに縛っている医局講座制へと向かった。医局の指示通りに医師が動かされている限り臨床医が育たない恐れのあることも見えてきた。大学は基本的に研究中心であり臨床医を育てるのに適しているとは言えない。
大学病院に回されてくる患者さんをみれば、それがよくわかる。大学病院にくる患者さんはたとえば、肝臓がんと診断された方々だ。そうした症例は確かに専門的な研究の対象としては格好の素材となるだろう。しかし、臨床医を育てるために必要なのは肝臓がん患者を診ることだけではなく「なんか、お腹のこのへんが痛いんですよ」といってやってくる患者さんと一緒になって病気に向き合うことだ。そんな機会は大学病院にはあまりない。
しかも大学医局に所属している限りは、いくら臨床を学びたくとも赴任先を自分で選ぶことはできないし、自分が勉強したい分野に手を伸ばしにくい。そんな理不尽なヒエラルキーから離れたいという若い医師達が増えてきている。そんな環境を改善し、自己責任で自分の人生を選択しようとする医師をサポートするのは意義があると実感した。他にも医療界にはギャップが沢山あることが見えてきたので、それならきっとビジネスチャンスがあるんじゃないかと思ったのです」。
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FMO第2弾【メディカルプリンシプル社】
2007.12.11
2007.12.04
2007.11.28
2007.11.19