「交渉」と聞くと、荒野のガンマンよろしく1対1で向き合って丁々発止と言葉の対決をするというイメージが浮かぶかもしれませんが、実際のところは「交渉の三役割」を別々の人が分担できるように、チームを組んだ方がうまくいくものです。 本稿では、交渉に必要な三つの役割を解説した上で、とはいえ一人で臨まなければならない場合に、交渉ごとを上手に進めるための「愛犬の法則」を紹介します。
交渉の三役割は、応酬、記録、意思決定
「交渉」と聞くと相手と向かい合って丁々発止と厳しい言葉のやりとりをするイメージがまっさきに浮かびますが、それ以外にも「記録」、「意思決定」という役割も同じぐらい重要です。
「記録」はその名の通り、自分の発言や相手からの返答を書き留めるのが主な機能です。とはいえ、議事録をつくるのが目的ではなく、記録をしながらロジカルシンキングを駆使して交渉相手の「真のニーズ」の仮説を立てるのが本当の役割です。
交渉ごとというのは、こちらも相手も何らかのニーズがあり、それを達成したいからこそ行うわけです。ただ、「真のニーズ」が相手にバレてしまうと、交渉においては不利なポジションに立たされることが多いため、お互いにさらけ出すことはあり得ません。
たとえば、労働組合と会社の交渉をイメージしてみましょう。労使の交渉において論点となるのは、
・賃金
・雇用の確保
・労働時間の削減
・定年の延長
などなどいろいろ考えられますが、たとえば労働組合の側に立った時、一番勝ちとりたいのは「定年の延長」だと仮定しましょう。
もしも、この定年の延長をまっさきに主張して、「とにかくここだけは譲れない!」とホンネを言ってしまったらどうなるでしょうか?会社側にしてみたら、これほどオイシイ情報はありません。「じゃあ、『定年の延長』を飲むかわり、賃金を下げて、雇用も保障しないで、しかも労働時間も増やしますよ」、といわば「真のニーズ」を人質にとって、他の条件を徹底的に自分たちの有利に進めてくるはずです。
結果として、雇用の延長は勝ちとったけれど、そもそもとして雇用が確保できなくて、簡単にリストラされてしまうなんてことになったら本末転倒。なので、上手な交渉者は、真のニーズは隠して交渉に臨むのです。たとえば、先ほどの例で言えば、あたかも「賃金」が真のニーズであるように交渉を始めたりするのです。
その上で、「賃金」ではワザと負けて会社側に譲歩します。当初は、「3%の賃上げを要求する!」と言っていたのが、「会社のフトコロ事情が苦しいのも分かったし、じゃあ賃上げは1%でいいですよ」、なんて。
そして、この譲歩を使って、真のニーズでは自分たちの欲しいものを勝ちとります。「賃上げでは妥協したんだから、定年の延長に関してはこちらの言い分を認めてくださいよ」、なんていう風に。結果として、自分たちの真のニーズは満たしつつ、他の論点でも損をせず、全体としてはより有利な条件を達成できます。
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