わかりやすい説明をしたいとき、「第1に、第2に、第3に…」とポイントを絞って話す「ナンバリング話法」は、多くの人が使っているでしょう。 実際、これをやるだけで頭が整理された人に見えますから便利なものですが、失敗すると逆に「プッ、それ、おかしいよ(笑)」と一気に説得力を失ってしまいます。 そんな、ナンバリング話法で陥りがちな罠を避けるための「サンマ感」という概念を紹介したいと思います。
ちなみに、「サンマ」は魚のサンマで、「散漫感」の誤植ではありません。
ことの由来は、筆者が講師を務めるロジカルシンキング講座で起こったある「事件」。「モノゴトを整理する枠組み」を考えるパートで、題材として動物の分類を考えてみよう、とディスカッションしていた時のこと。
「ほ乳類」、「は虫類」…と出てきた後に、突然一人の参加者が「サンマ!」と叫んだのです。
本来であれば、「魚類」というカテゴリー名を言うべきところを、何を焦ったか具体的な魚の種類を言ってしまったのですね。
それ以降、このように、抽象度のレベル感が異なるものを並べてしまうことを「サンマ感」と呼ぶようになりました。
もちろん、「サンマ!」の場合はすぐに「それ、おかしいよ(笑)」となるのですが、実はビジネスでもレベル感がそろっていないために違和感を感じることは多いもの。
たとえば、先日ある会社の成功を分析したレポートを読んでいたのですが、
「第1にマーケティング力、第2に人材マネジメント、第3に売上アップ」
という並びになっていて、「それっぽい」わりには今イチ納得感がありませんでした。その理由は、第3の「売上アップ」だけが結果指標で他の二つとは違うためで、まさにサンマ感があったからに他なりません。
そんな目で、普段のビジネスコミュニケーションを見直してみると、意外ほど多くの「サンマ」が会話の中を泳ぎ回ってるかもしれません。
では、どうやってサンマ感を避けるのか、と言うコツがネーミングに込められています。
というのは、「名前を付けることによって、その問題に気付きやすくなる」という効果があり、「サンマ感」という、ちょっと特殊なネーミングをした理由もここにあります。
ビジネスパーソンであれば、これまでも抽象度のレベルがそろっていないがための違和感を感じることがあったでしょう。
ただ、それを記述する言語を持たないと、「何かおかしいけど…、どう指摘したらいいかわからない」となりがちなのです。
逆に言えば、「サンマ感」という用語を知れば、まるでアンテナが立ったように、レベル感の違いによるおかしさに気付き、いつの間にか自分でもレベル感をそろえることができるものです。
ちなみに、筆者はこのように「ある問題に気付きやすくするために名前を付けること」を、「『わかる』を『できる』に変えるネーミングの法則」と呼んで、様々な場面で使っています。
もっとも、このような考え方自体は他の方の識者の方々も提唱していて、たとえば野口悠紀雄先生は「超整理法」シリーズで、「コウモリ問題」、「神様ファイル」、「マゼラン的な仕事」のような素敵なネーミングをされていますね。
ぜひこれからは、わかりやすい説明をしたいと思ったら、「サンマ感」でご自分の話の内容を(無意識に)チェックしてはいかがでしょうか。
ビジネスファシリテーター
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