会社の論理と個人の論理、この二つのせめぎあいを乗り越えていく術とはひとえに、普段にも増して豊かなる「コミュニケーション」である。
組織変革は実に難しい。
組織に限らず、変革していくということ、大きく変わるということには、
前向きなことばかりではなく、何らかの摩擦や痛みが伴うがゆえ。
プラスとマイナスのバランスを取りながら変革を進めていくことは正に至難の業である。
15年の経験で言うと、
とりわけ「企業の論理」と、「個人の論理」のせめぎ合いに最も大きな難しさがあるように思う。
典型的なのは、いわゆるリストラ局面において、人員削減の大義名分を語る時。
「〇〇〇〇社の生き残りのために苦渋の決断である。〇〇〇〇の理念と歴史の火を消さないため
には、一度ダウンサイジングするしか道はない」と、
一部の人に出て行ってもらうことが、会社の生き残りのためになるんだ、と説得する。
退職を余儀なくされる人は、多少色のついた退職金を手に
「ここまで育てていただいたご恩返しに会社のためなら涙を呑んで・・・」と腹を決める人と、
「なんで俺でなくてはならないのか。会社の勝手な論理のために・・」と、
禍根を残しながら去って行く人に分かれることになる。
その分かれ目は、人事や経営者がどこまで心を尽くし、
真摯に向き合い人間的な対応するかどうか、にかかっている。
人間性がもろにぶつかる場になるのである。
「去るも地獄、残るも地獄」という言葉も使われるように、
リストラで出されるようなことが無いとしても、
会社の業績悪化に伴う変革の場合には、組織の論理と個人の論理のせめぎ合いはある。
業績の急激な悪化に伴う組織変革の場合には、何をおいても出血を止め、
大きく生産性を改善するための手を打つことが急務である。
不採算部門を閉鎖したり人員を大きく削減し儲かる部門にシフトするようなことは当たり前。
多くの社員に物理的にのしかかるのは、一人ひとりの業務負担が増えること。
そして昇給停止や給与カットなどの待遇の悪化。
これらがセットでやってくるために、精神的負担も大きくなるわけである。
企業の論理は、「ここで会社が無くなれば、社員の仕事そのものが無くなり最悪の事態になる
わけだから四の五の言わずに事情を理解して、必死に働いてほしい」ということになり、
個人の論理としては「経営力が無いせいでこうなったのに、自分たちにここまでの皺寄せが
来るのではたまらない。経営者自らもっと働いてほしいし、社員への配慮ももっとあって
いいはずだ」ということになりがちである。
この二つの論理のせめぎあいを乗り越えていく術はひとえに、
普段にも増して豊かなる「コミュニケーション」しかない。
話して話して話し合い抜くことしかない。
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組織変革
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。