画期的な製品開発に成功、さて目指すは成長率ナンバーワンのアジア市場だ!…ホントにそうですか?
アジア新興国市場への進出に関してのリスクをどう伝えようかといつも悩むのだが、今回はメディア等で扱われた事例を使ってみることにする(これなら守秘義務はないので)。
BSジャパンの 「日経スペシャル アジアの風 ~小さな挑戦者たち」(お気に入りの番組だったが、3月末で終了してしまい、個人的には残念)で2月9日に採り上げられたのが、中野鉄工所の「エアハブ」というユニークな自転車部品。なんとパンクの心配を大幅に減らすハブ(車輪と車体を繋げる部分)である。
ハブ自体に空気入れの機能を持たせ、一日に約200m走るだけで自転車のタイヤは適正気圧を維持するという画期的なアイディアである。適正気圧を維持できていると、パンクの可能性は激減する。 http://www.bs-j.co.jp/asianwind/bn45.html
この製品の開発背景に少し触れよう。格安の中国製自転車に押され、国内生産は今やピーク時の1/10以下。そんな危機を突破すべく試行錯誤の末に完成した同社のエアハブは日本の大手自転車メーカーに採用され、高価格部品でありながらも販売台数は7万台を突破!…と、ここまでは部品メーカーの復活譚である。
さてこの勢いを駆って、同社は伸びゆく台湾市場に打って出ようと考えた。なぜ台湾か?世界的メーカーが集積する一大製造拠点で、日本や欧米などに輸出をしているからである。ここまでは頷けるのだが、ここからは「?」が付き始める。
番組では同社の「アジア進出」を応援すべく、台湾市場および韓国市場に詳しい現地コンサルタントに尋ねていた。2人ともそれぞれの市場特性を考えて、「コスト抑制が必要」などと一生懸命にアドバイスするのだが、番組制作者の論点設定自体が間違っている。「生産拠点としてのアジア」なのか、「消費市場としてのアジア」なのか、混同してはいけない。
こうした高機能品が真っ先に受け容れられるのは、自転車先進国である欧州市場である。台湾メーカーは欧州にも輸出しているから、台湾の自転車メーカーに売り込みをすること自体は間違っていない。しかし台湾や韓国は高級自転車の消費市場としてはモノの数にも入らない。これらの市場に受け容れられるような商品手直しをしてもあまり意味はない。
それよりもむしろ欧州の地元メーカーに売り込みすべきだろう。その際、欧州市場の特性を独自に調査することも、売り込みの際の説得力を増すためには効果的かも知れない。努力の方向性を間違わないことだ。なんでもかんでも「これからはアジア市場」というのは大間違いだ。
この件は小生のブログでも採り上げてみたので参照されたい。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-134...
アジア市場進出
2013.05.31
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2013.01.10
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
