あなたは営業部門の責任者だ。来年の人事異動に向けて企画部門から、「新規事業の開発・推進の担当者を営業部門からどうしても1人は出してくれ」と言ってきている。本音は誰も出したくないが、社長の肝いりなので断るわけにはいかない。迷った挙句、「分析もよくできて優秀なはずだが、お客からは今一つ好かれず、数字が伸び悩んでいる」A君の顔が浮かんだ…。
あなたが送り出す側でも受け入れる側でも、A君を新規事業担当者にすることには慎重になって欲しい。しかし何故か、こういう人を好んで新規事業担当者にしたがる会社も決して少なくない。
小生のように数十ケースの新規事業をサポートしてきた(だけでなく自らも推進責任者になってきた)人間や、新規事業担当役員として数多くの新規事業に関わった人たちなら、共通認識として「こういうタイプの人は新規事業担当としては向かない」という物差しがあるはずだ。より詳しく人となりを知る必要があるが、A君はそれに当てはまる可能性がある。
「新規事業担当者に向かない」人の典型的特徴を幾つか挙げてみよう。
1.口達者で資料作りもうまい
少なくとも頭は悪くないし、スキルもある。一見、新事業の企画には向いているではないか、とお思いになるかも知れない。しかしながらその中身が問題である。
自分の頭で考えた内容なのか、どこかで読んだことをさも自分で考えたように話しているだけなのか、よく吟味して欲しい。例えば新規事業の成功例を沢山知っていることが実際に役立つことは多くない。むしろ自分の頭で考える習慣が根付いていることが重要だ。
資料作りも同じだ。そこらじゅうのウェブサイトからコピペし、多色の図表を使って最初から綺麗な資料を作ってくる担当者は少なくないが、中身の貧弱さをごまかそうとする下心が隠れているかも知れない。新規事業を企画するためヒアリングしようとする場合、むしろ資料はシンプルすぎるくらいでいい。色々と市場関係者に教えを乞ううちに中身は充実してくるはずだ。
2.言い訳がうまい
3.要領がよい
少々きつい表現になって恐縮だが、人との関わり方でその人の価値観がかなり滲み出るものだと小生は考えている。1のスキルがあって2~3の特徴が揃っている人には、用心したほうがよい。
机上で考えていたロジックと現実が違うことが見えてきても、またはミスをしていたのが判明しても、こうした人の場合、素直に認めずに何とかこじつけの理屈を考え出してしまい、その場を取り繕うのがうまい。手柄は自分、ミスは人のせいにしがちだ。社内の実力者に取り入ることには鼻が利くが、得をしないことには汗をかこうとはしない。言ってしまえば、彼らは自分が大好きで、利己的な性格なのだ。
しかし新規事業の場合、仮説と現実にギャップがないはずがない。相手としても、協力しても実を結ぶ保証はない。いちいち言い訳をするような態度では、市場の真実に近づけないばかりでなく、社内でさえ誰も相手にしたくなくなる。優秀なのに営業先であまり好かれない人というのは、その利己的な価値観が肌感覚で相手に伝わっている可能性が高い。
新規事業
2013.04.22
2015.08.10
2015.08.06
2015.09.16
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2016.04.27
2016.06.22
2016.07.27
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/