通販事業は、
なぜ貧乏くさいのか。

2008.02.17

営業・マーケティング

通販事業は、 なぜ貧乏くさいのか。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

大概のテレビショッピングは、貧乏くさい。 言い方を換えると、少し怪しい。 でも売れるっ。 経済合理では測れない、売り手の直感と思惑がある。 そんな話しを、少しシリーズで書き殴っています。

ジャパネットたかたのテレビの下取りキャンペーンは魅力的だっ。32型のハイビジョン液晶テレビが、TV台付きで208,000円。古いテレビの下取りを40,000円なので、実質168,000円。消費者心理に、ずっきゅーーーんである。

買い換え促進の一番大きな障壁は、「お金がない=経済的理由」ではない。「まだ使える=心理的理由」である。お客様の「もったいないやん」の壁を、いかに乗り越えるかが大きな問題なのだ。特に、戦前、戦後の激動の時期を過ごした世代の、その意識の壁は大きいっ。一番、お金を保有している世代の消費促進に、「もったいない」は、避けて通れないっ。

ジャパネットの高田さんは、この世代の心理をよくわかってらっしゃる気がする。ややこしいスペックよりも、「下取り」なのである。佐世保なまりの話し方は、「この人なら、まだ使えるテレビをなんとかしてくれるやろ」と安心感を与える。「もったいないけどしゃーないな」と思わせてくれる。贅沢を礼賛しないところに、ジャパネットたかたの「商い」の本質があるように思う。

「贅沢は素敵」だ。しかし、通販ビジネスにおいては、「贅沢は敵」である。未だに、高額消費のカタログショッピングは、一部にしか普及していない。言い方に語弊はあると思うが、大概の通販は、未だ「貧乏くさい」。かっこいいより、未だ「一生懸命」。戦後復興の時代の「商い」のようで面白い。時代は、常に原点回帰をしながら一歩ずつ進化する。これも、ヘーゲルの言うところの螺旋的発展の法則だろうか・・・。

断言はできないが・・・時代がいかに発展しようとも、「贅沢礼賛」の通販ビジネスは成立しないと考える。何故なら、ヒトは本当の贅沢をしたいとき「自らが物理的障壁を乗り越えてその幸せを享受しにいく」ものだから。そもそも、物理的距離の障壁を取り除くことが発展の基盤である通販に、ヒトは本当の贅沢を求めることができないから。

だから、ジャパネットたかたのように・・・通販ビジネスには、「心理的距離を縮める努力」が欠かせないのだ。「小さな心の贅沢」をいかに与え続けられるかが、今後さらに、通販ビジネスの成否の鍵になると思うっ。

通販事業に参入しようという大手メーカーに限って、失敗する。
広告費の使い方は、「もったいない」。
その在庫の山は、「もったいない」。
お客様を、そんな簡単に扱って、「もったいない」。
その人材を、そんなに簡単に見切って、「もったいない」。
成長産業だから仕方ないが・・・あああっ、もったいないっ。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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