~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
第一章 田舎学生から激動の社会人生活へ
赤坂の夜の世界というのはある種特殊な世界である。
官庁、霞ヶ関などの役所、政府関係機関などが近隣に
あるため、日本の行く末などが語られる政治家御用達の
料亭が、ひっそりと裏通りにあったりする。
かと思うと、ここは日本かと疑うばかりのハングル語や
中国語が飛び交う表通りがあったりし、多種多様化した
巨大繁華街である。
アジア人、黒人、白人などの外国人、大物政治家、役人、
財界人、サラリーマン、任侠の世界の人、ちんぴらなど
ありとあらゆる世界に軸足を置く人間が夜な夜な
混沌とした闇の中でうまく融合しながらうごめいている
夜の世界。
「これが夜の赤坂や。 一見華やかやろ?」
< は、華やかっちゅうか・・・、夜やのにえらいまぶしいな >
繁華街といえば、北海道のススキノしか知らない宮田
だった。
ススキノは、同じ繁華街でも北海道らしくあっけらかんと
しており、赤坂から感じるどろどろした何かおどろおどろしい
ブラックホールのような不気味な雰囲気はなかった。
マイクがご馳走してくれた高級中華料理に舌鼓を打った
一行は、場所を変えて赤坂見附の交差点から程近くに
ある高級ホテルの最上階にあるバーに移り、ウイスキーの
水割りを注文し、赤くぼんやりとライトアップされた
東京タワーをビルの間から望み、眼下に赤坂の夜景を眺め
ながらお酒を楽しんでいた。
マイクが口を開いた。
「宮田君。 自分なー。マーケティングって言葉知っている?」
「はー。マーケティングですよね。広報とか宣伝とかのこと
ですよね。」
< マーケティングぐらい知ってるわいや。いくらなんでも >
「まー、そや。 普通、日本の大企業には、マーケティング
本部とか、あるいはマーケティング部といった類の組織が
ようあるんやけど、大日本商事にはマーケティング組織っちゅう
もんがあれへんのや。自分、気ーついてたーー?」
「いえ・・・」
「うちに限らず他のいわゆる総合商社と呼ばれる会社には、
どこにもマーケティング組織なんかあれへん。
なんでやと思う?」
宮田はそれまで気づかなかった。
< そういえば、社内電話帳を見回してみても、そんな
部署名を見たことないな >
それに同期入社100人の連中の中で、マーケティングと
名前の付いた部署に配属になった人間が居るという話は
聞いいたことがなかった。
「そういえば、確かにないですね。 大事な機能だと
思うんのですが、なんでないんですか? ようわかりません」
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
商社マン しんちゃん。 走る!
2009.06.12
2009.06.12
2009.06.06
2009.06.03
2009.06.01
2009.05.21
2009.05.20
2009.05.16
2009.05.14