日本の環境技術は世界的に見て優れているという言われ方をすることがよくあるが、こうした発言をする人は何を根拠に言っているのだろう? こうした疑問を生じさせるようなジェトロからの報告を今回は紹介する。
日本の環境技術は世界的に見て優れているという言われ方をすることがよくあるが、こうした発言をする人は何を根拠に言っているのだろう?
トヨタのプリウスが世界的に売れ続けているからか?
でも、それはトヨタのプリウスが優れているのであって、日本の環境技術すべてというのは言い過ぎだ。
それとも、単に技術的に優れているということであって、製品・事業としての話は別ということか?
どんな技術であっても、最終的には製品としてお客様に認められる価値に落とし込まなければ普及しない。普及しなければ、どんなにすぐれた技術であっても、そこからは大きな価値は生まれてこないことになる。これは環境技術であっても例外ではない。
こうした疑問を生じさせるような報告が、日本貿易振興機構(JETRO、ジェトロ)から公表された。ジェトロがまとめた「2010年版世界貿易投資報告」によると、発電タービン、太陽光発電装置、燃料電池など環境物品43品目の2009年の世界での貿易額は1,825億ドル。これらの品目は、金融危機の影響により対前年比では減少したものの、近年世界の貿易総額の増加率を上回るペースで拡大、2004年からの5年間で約2倍に増加している。
日本の輸出額は159億ドルで、世界の環境物品貿易に占めるシェアは8.7%。2000年には日本はシェア16.0%を占める世界最大の輸出国だったが、2001年以降シェアを徐々に低下させており、2008年に中国、2009年に米国を下回り世界4位に落ちている。2009年の環境物品の最大の輸出国は、全体の14.7%を占めるドイツで、中国が13.4%、米国が9.7%でそれに次いでいる。特に、中国の2009年の輸出シェアは、5年前の約3倍と環境物品の貿易額の1.5倍の速度で膨らんでいる。
こうした環境物品における勢力図の変化の具体例としては、以前はシャープ、京セラ、三洋電機などの日本メーカが強かった太陽光発電で、Qセルズ、ファーストソーラー、サンテックパワーなどの海外企業にシェア上位をあっという間に奪われたのが記憶に新しいところ。
こうした数字、事例を見ると、「日本の環境技術は世界的に優れている」「環境技術を日本経済再生の切り札に」といった発言に対しては、「本当?」「何を根拠に?」と聞き返さざるを得ない。
今回の集計の対象になった43品目にはハイブリッド車、蓄電池、省エネ家電などは含まれていない。しかし、集計対象品目の問題だろうか。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます