事業会社の苦労を知らないエリート達の手で、経済、サプライチェーンを非効率化、非活性化、イノベーションを阻害するような規格の検討が地球環境保護の美名の下、水面下で進んでいる。 小さいながらも事業を営む人間の一人として、そんなまやかし、愚行にはNoと言わざるを得ない。
2010年7月にメキシコ・レオンで開かれた国際標準化機構環境専門委員会(ISO TC 207)でカーボンフットプリントが焦点の1つに浮かび上がった。ISO TC 207は環境マネジメントシステム規格ISO14001を発行している団体。ここでCO2など温室効果ガス(GHG)排出量の算定に関する「スコープ3」という新しい規格が議論されている。
両組織が策定する規格は、任意団体などが発行するプライベート標準だが、企業内活動における燃料の燃焼で排出される温室効果ガス排出量の測定に関する「スコープ1」と電力など2次エネルギーの使用によって間接的に排出する温室効果ガス排出量の測定に関する「スコープ2」で実績があり、世界に与える影響は無視できない。これらの2つ温室効果ガスの排出量については、企業は定期的に報告しなければならなくなっている。
現在、スコープ3として算定方法の規格化が検討されている温暖化ガスは、対象や範囲が次のように大幅に拡張されている。
(a)調達品に関する1次取引先から最上流のサプライヤに至る全排出量
(b)固定資産に関わる排出量
(c)輸送(搬入側と搬出側の両方)に関する排出量
(d)出張旅行、従業員の通勤に関連する排出量
(e)廃棄物に関連する排出量
(f)フランチャイズ店の排出量
(g)リース品の排出量
(h)投資に関する排出量
(i)顧客による製品の使用に関する排出量
(j)顧客の使用済み段階での製品に関する排出量
(参考:2010年9月24日 ECO JAPAN「世界環境標準化戦争 企業の環境対応に迫る“スコープ3”の脅威」市川芳明)
スコープ3は企業についての集計値だが、測定の仕方にもよるが、これらを測定するには結局あらゆる製品・サービス、事業活動におけるカーボンフットプリントの導入が不可欠である。カーボンフットプリントは製品・サービスのライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を測定・表示するという概念。
(a)から(j)の内容を良く見てほしい。企業レベルでこれらを集計すれば良いといっても、何れの活動にも、多くの外部企業からの製品・サービスが多く関わっている。しかも、その関与の仕方は様々で、単純に取引先企業の合計では非常に課題な数字になってしまう。製品・サービス、活動の標準値を用いては、個々の企業の環境負荷低減努力が反映されておらず、測定が環境負荷低減のインセンティブにならず、測定する意味がない。そうなると、資源、素材のサプライチェーンの源流にまで遡ってあらゆる製品・サービス、事業活動単位で温室効果ガス排出量を把握する必要がある。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます