前回は、カーボンフットプリントを巡る国際規格制定の動きをお伝えした。しかし、価値を生まない測定・監査の力を頼らずとも、環境経営は進んでいる。今回は、こうした取引先を巻き込んだ、サプライチェーンでの環境経営の取組をご紹介する。
「米スーパーマーケットチェーンのウォルマートやスウェーデンの大手ファストファッションチェーンのH&Mは、中国のテキスタイルサプライヤと共同で、それらのサプライチェーンにおける水、エネルギー、化学物質の利用を減らす取組を始めた。
ウォルマートは、米国NGOの天然資源保護協議会(NRDC:Natural Resources Defense Council) が進めるクリーンバイデザイン(CbD:Clean by Design)プロジェクトと提携し、戦略的に選定したテキスタイル工場がCbDの手法を導入するのを支援するプログラムを開始した。
ウォルマートは、選定したテキスタイル工場の水やエネルギーの利用についてのベンチマークデータや、それらの工場が達成した水やエネルギーの使用量の削減状況を確認した上でCbDに提供する。
H&MはNRDCの上海事務所と同様の取組を始めている。(参考:"Walmart andH&M reveal green pact with Chinese textile mills" Corporate Social Responsibility News, 2010/9/24)」
NRDCは1970年に法学部生や弁護士の一団により設立され、自然、生態系保護を目的に活動しているNGO。現在は300人を超える弁護士、科学者、政策専門家をスタッフに抱え、米国の環境保護法案立案の一部に関与するなどの影響力がある。
NRDCは近年、活動の幅を地球温暖化対策、化学物質の地球環境への汚染撲滅、中国の環境負荷低減活動支援などに広げており、その中でもClean byDesignは、グローバルに活動をしている小売や流通、ブランドメーカ、デザイナーと協力してテキスタイル産業のグローバルサプライチェーンをサステイナブルなものに変革するという目的で、経済性と環境持続性を両立する繊維、染料、工場の活動基準などを積極的に紹介している。
今回採り上げたウォルマートやH&Mの活動は自発的なものだ。測定、法規制に後押しされたものではない。環境経営は、企業の価値観、信念が変われば指標や法規制がなくても進むもの。
それを強制的に一律で無理やりやらせようとするから、「測定の定義をしっかりしなければ」「抜け駆けを抑えるために第三者による監査が必要だ」といった発想になってしまう。
市場が効率的に機能していれば、消費者などのモノを買う側、経営者などのモノを提供する側が自らの価値観、信念で環境負荷低減に取りませた方が、信念、自らの意思で以って取り組んでいるため、抜け駆けの心配もなく、やらされでやっていないだけに効果が大きくなる。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます