仕事は他者と知識や知恵を共有することで、新しいアイデアが生まれます。その相互作用によって仕事の質も成果も高まるのです。今回は、社内にある事例を学ぶこと、そのための仕組み、さらに、自らも積極的にナレッジを提供することについてお話します。
■□■ 事例に学ぶ ■□■
実務上の学びの材料は、社内にいくらでもころがっています。
営業であれば、提案資料をパターン別にファイルしたり、添付した参考資料をデータベースで管理したりしているかと思います。
自分ひとりでゼロから作り上げる必要はなく、それらのこれまでの先輩方が蓄積してきた財産を生かして、自分なりの加工に挑戦することもできます。
顧客センターなどでは、お客様からの問い合わせやクレームなどが、検索できるように保存されているはずです。
そうした問い合わせやクレームの集積は、宝の山です。
実はそうしたダイレクトな顧客の反応、声から学ぶことはとても多いのです。
顧客の声を集積する仕組みがない場合は、自分が提案してでも早急に作る必要があります。
プロジェクト型であれば、プロジェクトの振り返りレポート等が、どこかにファイルされていることと思います。
それらを読み込むことで、いながらにして成功事例、失敗事例を学ぶことが可能です。
成功事例、失敗事例が整理されていて、誰もがそこから学べる仕組みになっている組織は強いと思います。
大前研一氏が、駆け出しのコンサルタントだった頃、コンサルティングノウハウを短期に身につけるために最初に最も力を入れて取り組んだのが、先輩コンサルタント達の作品(提案書のファイル)のすべてを片っ端から熟読することだったというのは有名な話です。
世界のトップレベルの経営コンサルタントになる人でも、最初は事例から学んでいます。
■□■ 仕組みを活用する ■□■
こうした提案資料や、顧客情報や、事例ファイルなどを共有管理していくことをナレッジマネジメントという言い方をしますが、上手に管理していくためには、社内のナレッジを意味合いによって分類整理して考えることが重要です。
ここでは、ナレッジの4つの分類の仕方を覚えておきましょう。
●「統計知」
企業の業務システムで管理されている財務データを代表とする「定型情報」として扱うことが可能なデータから発生する知識。
●「現場知」
顧客情報や、取引先とのやりとりをはじめとした社員の日々の活動からもたらされる知識。コールセンターに寄せられる問い合わせなどから得られる知識や営業担当者の日報なども現場知に分類される。
●「創意知」
社員が他のナレッジ(統計知、現場知、一般知)を基に組み立てたり、それらからヒントを得たりすることによって創出された知識。
いわゆる「気づき情報」と呼ばれる社内情報や業務ノウハウなどがこれにあたる。
現場知との区別は難しいが、1次情報である現場知に対する2次情報として意味合いととらえればよい。
●「一般知」
外部から入手するニュースやトレンド、動向といった定性的な情報から発生する知識。
例えばインターネット上で得られる情報が相当し、それ自身を管理して活用するというよりも、他の知識の補強材料として 使用されることが多い。
◎社団法人 電子情報技術産業協会「知識情報処理技術に関する調査研究報告書」より
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。