「わからないことはお客様に聞け」と言われたり、思ったりしたことはありませんか?お客様に聞いて学んでよいのは、「お客様の理想像」と「苦情とご指摘」であり、それ以外は単なる甘え。お客様のことを調べるだけでなく、もう一歩進んだ情報収集をしてから接触する必要があります。
■□■ わからないことはお客様に聞け? ■□■
私が修行時代を送った会社は急成長していました。
その過程では、好んで「偉大なる素人集団」という言葉が使われ、「わからないことはお客様に聞け」という言葉が合言葉になっていました。
急成長企業が、強気の新卒者の大量採用を行い、さらなる事業拡大をしかけていく過程では、ビジネスマンとして多くの社員が未成熟なまま世の中に出ていかざるをえません。
圧倒的な商品力を持っていて、商品を理解しさえすれば、フットワークのよい元気な若者達が拡販することで事業を拡大していくことができる。
若さを売り物に、無邪気に素直に、わからないことは堂々とお客様に聞いて、前に進め、ということです。
若者ばかりで、いかにも危うい状態で経営せざるを得ないベンチャー企業などでは、それを逆手にとってパワーに変えていくために「わからないことはお客様に聞け」と言います。
しかし、この戦略は商品力が正に「圧倒的」で、「誰がやっても売れる」というような状態でなければ成り立たない乱暴な戦略です。
お客様の声を充分反映して商品開発やサービスの見直しに生かしていく、顧客重視の姿勢を謳う意味で「お客様に学べ」という掛け声をかける場合がありますが、それと「わからないことはお客様に聞け」では意味が違います。
■□■ お客様の学びを先取りする ■□■
お客様を超える専門性を持ち、価値のある商品を提供する。
それがもちろん商売として正常な状態です。
その道の専門家として、圧倒的な勉強量が必要なわけで、それは自分の責任で確保していかなくてはいけないことです。
また知識と同じように圧倒的な経験量も必要でしょう。
時として、非常に勉強熱心なお客様がいて、商品やサービスを提供する側よりも部分的には知識や経験が上回っていることがあります。
こういう場合であっても、提供する商品やサービス(コンサルティングなども含めて)の範囲については、お客様が何に問題意識を持ち、何に興味を持って学ぼうとしているかを察知して、学びを先取りしなくてはなりません。
「わからないことはお客様に聞け」などというのは、甘え以外のなにものでもありません。
プロとしてあるまじきことです。
■□■ 業界を勉強する ■□■
多くの企業の多くの社員が、自社の商品の勉強を一生懸命している一方で、お客様について知ることを怠りがちな傾向があります。
お客様のホームページをチェックするところまでは、やっているかもしれませんが、ボクがもう一段やれば大きな学びになるのになあと思うのが、お客様が属している「業界について勉強する」ということです。
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。