サービス業にもVE/開発購買。H.I.S.が片道4800円の航空券発売

株式会社エイチ・アイ・エス（H.I.S.）が、バンコク－成田間のフライトを片道4,800円で提供する。これは、100席限定のものだが、H.I.S.が扱うバンコク行きの航空券の価格は現在27,000円からとなっており、それと比べても大幅に安くなっている。

こうした大幅な価格低減には、バリューエンジニアリング（Value Engineering、VE）や開発購買の考え方が欠かせない。VEは、製品やサービスの「価値」を体系化された手順によって最大にする手法。開発購買は、VEを調達・購買の立場から実践するもので、VEの視点での仕様の作成や調達品・サプライヤの選定が主なものとなる。

今回のバンコク－成田間のフライトは、H.I.S.が現在キャラクターとして起用しているAKB48にちなみ4,800円と価格設定されたとのこと。つまり、先に提供価格が設定されたことになる。価格が設定されると原価も決まる。原価が決まると、それを原価を構成する要素に割り付けていく。この作業は目標原価割付と呼ばれる。今回のケースでは、4,800円の企画席だけでなく、すべての座席トータルの収入から原価を決め、機体の調達に2割、燃料に2割、直接人件費に1割といった形で必要な費用を割り当てていく。

すると、例えば片道150万円程度でフライトを確保しなければならないが、既存の取引航空会社の定期便をこの金額で抑えることができない、他の方法を考えなければならないということが見えてくる。今回のケースでは、もともと提携話が先にあったか、企画が先にあったのかは分からないが、H.I.S.はタイのバンコクにある旅行会社と提携し、格安チャーター便を手がける同社のグループ会社ビジネスエアセンターからチャーターで機体を確保。このフライトに必要となる国土交通省の認可も取得する。

当然、ビジネスエアセンターがそのような価格でフライトを提供するには、毛布やAV機器の貸し出し等の機内サービスも無料ではなく有料化せざるを得ない。この様に、割り付けられた目標原価に基づき、あらゆるサービス提供手段を検討し、最も費用対効果が大きくなる方法を採択していく。こうした試行錯誤の積み重ねの末、今回の企画は成り立ったのではないかと考えられる。

エンジニアリングや開発という言葉がつくとメーカだけのものと捉えられがちだが、かようにVEや開発購買はサービス業にも有効だ。

サービスの開発にもVEや開発購買の思想、手法を適用し、貴社でも圧倒的なサービス提供コスト、提供価格の低減を実現

中ノ森 清訓／株式会社　戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト： http://www.samuraisourcing.com/