なかなか顧客満足度が上がらず苦労しているという方が多いのではないでしょうか。これまで多くの方は「良い商品・サービスを提供すること」に注力してきたことと思います。しかし実は効果を生んでいるのは「顧客の事前期待をマネジメントする」発想だということが分かってきました。
回の記事「only oneになる課題探索型ビジネススタイル」でも触れましたが、時代やニーズの変化に伴いこれまでうまくいっていた顧客満足向上のための工夫がなかなか成果に繋がらないケースが増えてきているように思います。
例えば一昔前は、製品コストダウンやサービス提供のバックヤード効率化で早くて安いサービスを提供することで顧客満足を獲得できていたのが、最近では「ホスピタリティー」という言葉に象徴されるように個客一人一人に向けたサービスの提供がなければ顧客満足を獲得することが難しくなってきています。
しかし現実には、顧客満足度を向上させたいのだけれど、「どうやったら良いか分からない」「勘や経験に頼るしかない」ということが多く、個々でバラバラに取り組んでしまっているケースが多いようです。
そこで今回は顧客満足向上の考え方として「顧客満足の構造」を理解することで見えてくる「事前期待」を把握し、マネジメントするということについてご紹介させて頂きます。
■顧客満足の構造とは 顧客満足の構造は、下記のように表現することが出来ます。
この顧客満足の構造を意識することで様々なことが分かってきます。
「顧客満足=実績評価-事前期待」
これは、顧客が商品・サービスを利用する前に持っている「事前期待」を利用後に感じる「実績評価」が超えた時だけ、満足が得られるという構造です。つまり顧客満足というものは絶対値ではなく、事前期待と実績評価の差という相対値であるということになります。
顧客には商品やサービス利用前に期待している「事前期待」というものがあって、それに対して使用後の「実績評価」が大きいとその顧客は大満足となります。
具体的には、出張先でたまたま利用した格安ホテルが清潔で、対応が柔軟で、料理は地元の素材に拘っていて思いもよらない美味しさだったとき、「意外に良いホテルを発見した!」「また来よう」「同僚のも勧めよう」と思うといった具合です。この場合、ホテルを利用する前の事前期待が小さかったのに対し、実際利用してみたら予想以上のサービスで「実績評価」が事前期待を上回ったため、満足感を感じたということです。
そしてこの「事前期待を越える実績評価」を繰り返し、満足感を提供し続けることで「リピート顧客化」していきます。
反対に事前期待が大きくて実績評価が低いと「何だ、もう使うまい」ということになってしまいます。そして、事前期待と実績評価がほぼイコールの場合は、「印象が薄い」結果になってしまいます。競争相手がいない間は、期待値≒実績評価の状態でもいいのでしょうが、少し評価の高い競合が近くに現れたら、顧客はすべてそちらへ流れてしまう危険性が高いのです。
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新