「どの会社を見ても同じようなことを書いてあって、読んでも違いが分らないので、とりあえずエントリーしてみるしかない。」これが学生の本音である。
ビジネスマンの目から見ても、新卒採用のサイトに並ぶ採用広告は、非常に似たものがズラリと並んでいるように見える。ましてや、基礎知識に乏しい学生の視点では、どれもこれも同じように感じるだろう。「採用活動(就職活動)がネットに移行してから、エントリーが簡単になり、よく会社のことを分らずに応募してくる学生が増えた。」というのが昨今の採用側の不満であるが、学生側から言うと、「どの会社を見ても同じようなことを書いてあって、読んでも違いが分らないので、とりあえずエントリーしてみるしかない。」ということではないかと思う。
実際に、会社を語るには様々な切り口があるはずなのに、自社の魅力を十分に考えないまま広告作成を外部のライターや制作担当者に丸投げしてしまう会社が多すぎる。「学生が見るのだから、若い社員が元気よく働いているのが分ればいいだろう。」「新人でもすぐに溶け込めるような、雰囲気のいい社風であるのが伝わればいいだろう。」といった、実に安易なウリを掲げている会社の多いこと。採用サイトのオープン時期に合わせて、取材しなければいけない会社が一時に集中するライターにしてみれば、そのように、深くその会社を理解する必要がなく書いてしまえるのは楽であろうが、似た情報の中から志望する会社を絞って選択せよと言われる学生は、たまったものではない。
採用広告は、人事の「会社観」が表れる。当社の強みや特長は何か。当社の目標と戦略、それに対する問題点は何か。企業の目的の達成や戦略の遂行に対して、組織や人を最適化するというミッションを持つ人事部が、これらを自問自答し続けるのは当然だ。内部から深く事業や組織や人を理解し、それらを歴史や未来や事業環境から捉えなおし、さらに客観的に批判精神を持って検証してみるといった作業を通して、社内の誰よりも自社を理解していなければならない。そうして生まれた自社に対する識見がベースになければ、人事部における企画系の業務は、思いつきや横並びや流行に頼るしかない。会社は多様であるのに、やっていることが似たようになるのは、そういうことであろう。
ミスマッチの原因も、ここに求めることができる。学生が会社に入ってから「違った」と感じるのは、人事部の自社に対する理解度と表現力の不足によるところもある。我が社の特徴、強みと改善点、魅力と問題点がしっかり分っていないから、学生にも伝わらない。人事異動になってすぐの新聞記者が書く記事が分りにくいのと同じで、分っていない人が表現したものは分りにくいのである。分っていない人が表現したものをもとに選ぶのだから、会社の選択を誤るのも無理からぬところだ。
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。