起業する際、「何を社会に提供し、何を大事にして仕事をするか」を考えたものを『創業の精神』という。その『創業の精神』を『企業理念』へ反映させているものは、社内に浸透しやすい企業理念となるであろう。
このところ企業理念のご相談をよくいただくのですが、これは実に難しい問題です。
相談内容は
・社内に浸透していないがどうしたらいいか
・企業理念を再設定したいので手伝って欲しい
主にこの二つです。
何ごともそうですが、形にならないもの、目に見えないもの、人の中にあるというようなものは、ことごとく難しいのであります。
しかし、難しいことこそ大切なことが多く、大切なことほど、易しいことに変えていかないといけないのだと思って、取り組んでおります。
【企業理念は絶対必要なのか】
さて、企業理念でありますが、ゼロベースでまずは考えてみる必要があるのではないかと思います。
判で押したように「経営で最も大切なものは企業理念である」「企業理念を大切にすることがいい会社にしていく最大のポイントだ」という論調で、企業理念を最優先に考えるように、ものの本に書いてあったり、企業理念のコンサルティング会社のホームページにも書いてあるのですが。。
このように言っている時の「企業理念」というのは、とってつけたような耳ざわりのよい、ホームページに載せるような「文章」のことを言っているわけですね。
こうした「対外的にかっこよく見せるための文章」のことをどうも企業理念だと勘違いしている人が多いと思います。
「新しいコミュニケーション文化の創造を目指す」とか「より多くの人に安心と喜びを提供する」とか「技術を通じて社会に貢献する」とか、上げればきりがないのですが、このようにその企業のトップの思いや哲学がまったく感じられない、ありきたりの文章の企業理念はそこらじゅうにあります。対外的にも社員の心にもちっとも響かないことはわかっているのだと思いますが、このような会社は「企業理念くらいないと、かっこ悪い」くらいの感覚で制定しているのでしょうか。
それであれば、まだないほうがいいということもありえますよね。
・対外的に決してプラスイメージにならない(ありきたりで特徴がない)
・社員が自社の企業理念に誇りが持てず逆効果
・経営者が「浸透しない」ということをずっと悩むようになる
本末転倒ですね。
【理念のない会社はない】
企業理念というものを「外」に向いてばかり考えているから、そういうことになるのかもしれません。企業理念の制定目的には、外向けの意識と内向けの意識とがあるわけです。
外向け ⇒ ホームページや会社案内などに記載して、対外的な取り組み姿勢の宣言とする目的。採用場面などでのアピールのために記載することもこれにあたる。
内向け ⇒ 仕事に従事する社員に対して、経営として大切にしている考え方や、将来の方向性を指し示すものとして掲げる目的。
このように分けて考えると、多くの会社が外向け重視で企業理念を作り、それを無理やり内向けにも「浸透だ」「覚えろ」とやっているようにも見えます。
一石二鳥を狙うとだいたい失敗するものかもしれませんね。
そもそも何を社会に提供し、何を大事にして仕事をするかを考えずに会社を興す人は少ないわけで、こうした「創業の精神」というものは、必ず存在します。
これらのことは、実は社長の内にあるものなんですね。
頭の中や心の中や、体に染み付いたものであり、それを折に触れて社員に話したり、行動で現したり、書き物に残したりすることで伝えていこうとします。
小さな会社ほど、これらのことを間近にいる社長から直接感じ、吸収することになるわけなんです。
こう考えますと、小さなうちは、ことさら「企業理念」などと気取った表現にして、せっかくの内容を伝わりにくくしてしまう必要などないのかもしれません。
むしろ、とってつけたような他社のモノマネをしたような文章にしちゃって、元々持っていた素晴らしい創業の精神を忘れちゃうことになる例も多いですね。
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。